書評『黒牢城』米澤穂信 第261回

書評

著者の米澤穂信はミステリーのイメージが強い作家です。『満願』『王とサーカス』で2015年、2016年と2年連続でミステリーベストテンの1位となっています。その年のベストワンは国内・国外と読むようにしていますので、この2冊とも買いましたが、短編のため結局読了しませんでした。

今回の『黒牢城』は日経新聞で、縄田一男が絶賛していました。織田信長に叛旗を翻した荒木村重が有岡城に立て籠もります。有岡城は今の伊丹空港があるところです。着陸するときに大阪城がよく見えます。石山本願寺と連携し信長と対峙します。

そこに黒田官兵衛が「勝ち目はない」と説得に来ます。秀吉の命で来ていますが、斬首は覚悟の上です。ところが、意に反して、城の土牢に入れられ有岡城に囚われてしまいます。斬首にならなければ、官兵衛自身が謀反を疑われ、信長に人質に差し出している長男の松寿丸(後の黒田長政)が磔にされると、唯一、官兵衛は「殺せ!」と狼狽します。

籠城している城内にいろいろと奇怪な事件が起こります。疑心暗鬼になっている荒木村重は、城内に相談する者がなく、官兵衛の知恵を借りに地下牢へと降りていきます。次々と起こる四つの事件について、土牢にいる官兵衛が洞察して村重にヒントを与えます。村重にとって官兵衛はいつでも殺せる立場です。官兵衛はそれには構わず、逆に村重を挑発し、翻弄していきます。その緊迫感は普通のミステリーでは味わえません。

通常では落とせない巨大な城です。信長勢はすぐ近くにまで来て散々に挑発はしますが、逆に村木は奇襲して大将首を獲ったりします。いずれにしても1年近くの籠城で、内部から崩壊していく様がなかなかリアリティがあります。米澤穂信の筆力に感心しました。さすがです。

石山本願寺と、黒田藩の祖という自分に身近な題材ということもあって、長野への旅行中に一気に読んでしまいました。

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