税制改正

第123回 平成29年度税制改正 ②配偶者控除・配偶者特別控除の見直し

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

平成30年以後の所得税の計算について、配偶者控除・配偶者特別控除が見直されました。控除対象配偶者とは、その年の1231日の現況で、4つの要件の全てに当てはまる人です。

① 民法の規定による配偶者(内縁関係の人は該当しません)。

② 納税者と生計を一にしていること。

③ 年間の合計所得金額が38万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)。

④ 青色申告者の事業専従者でないこと。

現行制度では、一般の控除対象配偶者は38万円の控除が受けられます。その年1231日現在の年齢が70歳以上の配偶者の場合(老人配偶者控除)は、48万円控除となります。

今回の改正では、配偶者の給与収入の上限を、現行の103万円から150万円に引き上げられます。給与所得が150万円の場合、所得金額は90万円となります。

ただし、控除を受けようとする人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除を受けることはできません。合計所得金額が900万円以下であれば38万円、900万円超950万円以下は26万円、950万円超1,000万円以下は13万円の配偶者控除となります。

配偶者特別控除は、対象となる配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下の場合、合計所得金額900万円、950万円、1,000万円の区分により、配偶者の所得が高くなるにつれて配偶者特別控除が減っていきます(現行の配偶者控除は配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満)。

また、扶養控除は合計所得金額が38万円以下であれば、配偶者特別控除のような控除はありませんので、念のため。

第122回 平成29年度税制改正 ①所得拡大促進税制の見直し

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平成29年度の税制改正はあまり大きなものはないようです。そのうち、中小企業等にかかわる改正をいくつか取り上げたいと思います。第1回目は「所得拡大促進税制の見直し」です。

所得拡大促進税制をうけるための3つの要件のうち、1つめは基準年度よりも平成2526年度は2%、平成2729年度は3%増加している必要があります。3月決算会社の場合、平成253月期(平成24年度)が基準事業年度となります。

2つめの要件は、給与等支給総額が前事業年度以上である必要があります。基準年度と比較して23%アップしていても、直前の前事業年度に比較して支給額が減少すると要件を満たしません。

3つめの要件は、平均の給与等支給額が前事業年度を上回ることです。うちのお客様で、支給額は十分に増えているけれども、新規採用が増え平均給与が下回るケースがありました。また前年度に賞与を多く支給した結果、平均が前事業年度よりも下がったケースもありました。

これら3つの要件を満たせば、給与等支給額の24年度からの増加額の10%が税額控除となります。ただし、調整前法人税額の20%(大会社の場合は10%)までという制限がありますので、実務上は、この法人税額の20%に収まってしまうことが多いようです。

今回の改正は、給与等支給額が前年比2%以上になった場合、前年度からの増額部分の税額控除を10%から22%に引き上げるものです。大会社の場合は12%となります。法人税を多額に納税している会社は有利となります。

所得拡大促進税制は、いまのところ3月決算会社では平成303月期で期限切れとなります。正確には平成303月末までに開始する事業年度で終了となります。

第119回 均等割基準の改正

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平成27年度税制改正前は、法人住民税均等割の税率区分の基準となる「資本金等の額」は、法人税申告書の別表51)の「資本金等の額の計算に関する明細書」の合計額をそのまま基準としていました。

均等割とは利益がなくても納税しなければならない法人市民税・県民税です。福岡県福岡市では資本金等1千万円以下で71,000円です。資本金等が1千万円を超えると均等割は208,500円となります。

平成27年度地方税法の改正により、法人住民税均等割の税率区分の基準となる額は、「資本金等の額」に、次の1の額を加算し2および3の額を減算した金額となっています。

  1. 平成2241日以後に、無償増資により利益剰余金または利益準備金を資本金の額に組み入れた金額
  2. 平成1341日~平成18430日に、旧商法の規定に基づいて無償減資による欠損てん補をした金額
  3. 平成1851日以後に、会社法の規定に基づいて資本金の額または資本準備金の額の減少により生じたその他資本剰余金を欠損てん補に充てた金額

結果として、外形標準課税の資本割の課税標準と同じ規定となっています。

同じ平成27年度税制改正により、法人住民税均等割の基準である資本金等の額が、資本金と資本準備金の合計額を下回る場合、基準を資本金と資本準備金の合計額とすると改正されました。

自己株式を取得した場合、法人税法上の資本金等の額は減算しますが、会社法上の資本金の額と資本準備金の額は変わりません。この場合は、「資本金の額+資本準備金の額」が税率区分の基準となる額となります。

最近は、自己株式を取得するケースが増えています。均等割の金額に注意しましょう。

第115回 源泉所得税について

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やっと確定申告が終わって一息ついているとこです。今年の確定申告シーズンは、税務調査が重なって大変でした。これまでは2月は税務署も忙しいので、この季節に税務調査はありませんでした。今回はそれも数社重なってしまいました。

調査官にお聞きすると、年間に調査に行く件数が増えたそうで、赤字法人であっても、書面添付していても税務調査がありました。繰越欠損金がある場合は、法人税・地方税の納税には直接影響しません(繰越欠損金は減りますが)。しかし、消費税、源泉所得税は赤字であっても関係ありません。最近は源泉所得税を厳しくみる傾向にあるようです。

社員を表彰する場合に、商品券、クオカードなどを渡すことがあります。その場合でも源泉しなければなりません。そのまま渡したいという相談を受けることがありますが、商品券分も給与明細に入れて、源泉する必要があります。個人々々で計算するとそれほど多額にもなりません。

また、個人的な支出を経費に計上していた場合、給与とみなされることがあります。中小企業でオーナー経営の場合、注意しなければなりません。事業と関係のない経費とみなされると役員賞与となります。社長の場合は、従業員よりも多くの報酬をもらっていることが多いので、その際の源泉所得税は高額になりかねません。税務調査で指摘されれば、一旦は源泉所得税を会社から支払うこととなります。

外注先への支払いでは、相手が法人であれば源泉の必要はありませんが、個人であれば所得税法20418に該当すれば源泉徴収しなければなりません。調査では先方が確定申告しているかどうかも確認します。

第114回 退職金をもらったときの確定申告

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今日315日は確定申告の期限日です。退職金所得について確認しておきましょう。退職金所得は分離課税です。退職する人から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けているか否かで取扱いがかなり異なってきます。実務的には、退職する人に書いてもらい、会社に保管しておく必要があります。

「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合、退職所得は次の計算方法で算出して源泉徴収します。

(退職金-退職所得控除額)×12=退職所得の金額

退職所得控除額は、勤続年数が20年以下のときは1年当たり40万円、20年超からは1年当たり70万円となります。ただし、「退職所得の受給に関する申告書」がない場合は、退職金に20.42%の税率を乗して計算した金額を源泉徴収しなければなりません。

例えば、2,500百万円の退職金では、勤続年数を30年とすると、「退職所得の受給に関する申告書」があれば572,500円の源泉徴収となりますが、不備の場合は5,105,000円の源泉徴収額と多額になります。最近の税務調査では源泉徴収額を厳しく見られますので、会社側で一旦、これを支払うとなったら大変です。

退職金を受け取った個人からいえば、一律20.42%の源泉徴収を引かれている場合は、確定申告すれば、他の所得がないとすると差額の4,532,500円が還付となります。

役員等の勤続年数が5年以下である場合、平成25年分以後は退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額が退職所得の金額になり、計算式の1/2計算の適用はありません。

「退職所得の受給に関する申告書」により源泉徴収を受けていても、確定申告の控除額が残っていれば還付になることがありますので、今一度、計算してみましょう。

第113回 給与所得控除の減少

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確定申告もいよいよゴールが見えてきました。疲れがピークのところです。お客様に、今回の確定申告の説明をしているところです。

そこで改めて思うのは、給与所得控除が減ってきたということです。例えば、昨年と同じ給与収入の場合、給与所得も同じになると思って説明しています。しかし、同じ給与収入にもかかわらず、給与所得は今回の平成28年度の方が多くなっています。

不思議に思って確認すると、ここ数年、給与所得控除は減ってきています。判りやすくするために給与収入を1600万円とすると、給与所得控除は平成24年度260万円、平成2527年度245万円、現在申告中の平成28年度は230万円、来年申告の平成29年度は220万円と年々減少しています。

逆に、法人税の方はここ数年、税率は低下してきています。地方税を含めた実行税率は、かつては40%ありましたが、現在は約34%になっています。東北大震災による復興特別法人税は平成26年税制改正により、平成263月期までで1年前倒しで廃止になっています。

それに対して所得税は、上記のような給与所得控除の減少、平成27年度からは最高所得税率が40%から45%へ上昇と増税の傾向です。復興特別所得税は平成49年度まで続きます。税率は所得税の2.1%です。

給与の源泉徴収税額表は毎年改訂され、こちらも少しづつ源泉徴収税額が増加しています。法人に優しく、個人に厳しい税制改正のようです。そのため、法人の配当率は高くなり、対して個人の可処分所得は減る傾向にあります。

第108回 消費税の簡易課税制度の改正

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消費税の納付税額は、原則として課税売上げ等に係る消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を差し引いて計算します。

しかし、課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出している場合は、課税売上高から納税額を計算できる簡易課税制度の適用を受けることができます。

仕入控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合とするというものです。この一定割合をみなし仕入率といい、事業の種類ごとにみなし仕入率が異なります。売上を卸売業、小売業、製造業等、サービス業等、不動産業及びその他の事業の6つに区分し、それぞれの区分ごとのみなし仕入率を適用します。

平成2741日以後に開始する課税期間から、簡易課税制度のみなし仕入れ率について、従来の第四種事業のうち、金融業及び保険業を第五種事業とし、そのみなし仕入率を50%(従前60%)に、従来の第五種事業のうち、不動産業を第六種事業とし、そのみなし仕入率を40%(従前50%)に改正されています。

個人事業主では、特に不動産業は珍しくありません。みなし仕入率が50%から40%に変更になったということは、控除額が減ったということですから、納税額を増える結果となります。

また、2種類以上の事業を営む事業者で、1種類の事業の課税売上高が全体の課税売上高の75%以上を占める場合には、その事業のみなし仕入率を全体の課税売上げに対して適用することができます。卸売業、小売業の場合は、みなし仕入率が90%、80%ですので、これらの事業が75%以上であれば少ない消費税額になります。

逆に、不動産業が75%以上であれば多めの消費税となってしまいます。売上高が5,000万円以下の場合、原則と簡易とどちらが有利か、翌期が始まるまえに、よく検討しましょう。

第102回 平成29年度税制改正大綱

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自由民主党、公明党は平成28128日、平成29年度税制改正大綱を決めました。1222日に税制改正大綱を閣議決定し、1月召集予定の通常国会に税制改正法案を提出し、今年度中の成立を目指します。

税制改正大綱には「一億総活躍社会を実現し、日本全体の成長力を底上げしていくためには、働き方改革とイノベーションが両輪となる」とあります。

大綱の目玉は、配偶者控除の見直しです。女性の社会進出を促す「働き方改革」の一環としています。年収要件を103万円から150万円に事実上拡大する。103万円は企業の配偶者手当の基準になっている場合も多く、パート主婦が就業調整して働く時間を抑える傾向にありました。パート主婦が働く時間が増やしやすくなるとしています。

一方、従来より社会保険には130万円の壁があります。この額を超えると社会保険に加入する必要があります。配偶者控除150万円の基準を設けても、130万円を超えてはあまり増えない可能性があります。

また、今年の10月からは新たに社会保険の106万円の壁ができています。社会保険の適用対象が所定労働時間については週20時間に引き下げられ、年収106万円という年収要件も加わります。このため、501人以上の大企業に勤めているパート主婦は、夫の扶養に入る以前に自分の勤務先で社会保険に加入しなければならなくなります。となると、年収を106万円に抑えようという動機につながっていきます。

税制改正では所得を増やしやすくし、社会保険制度では減らす方向性となっており、アンバランスなものになっています。税金は減ったけれど、社会保険負担は増えたということになりかねません。

第99回 欠損金の繰戻しによる還付

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平成 21 年度税制改正により、中小法人等の平成 21 2 1 日以降に終了する事業年度において生じた欠損金額について、法人税の繰戻還付が認められています。ここで中小企業等とは、資本金1億円以下の法人です。

この制度は、青色申告書である確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合において、その欠損金額をその事業年度開始の日前1以内に開始した事業年度に繰り戻して法人税額の還付を請求できます。

要は、前期に黒字で法人税を納税していて、当期に多額の赤字を計上した場合、当期の赤字で前期の法人税を還付してもらえる制度です。

計算式は、還付金額=還付所得事業年度の法人税額÷還付所得事業年度の所得金額×欠損事業年度の欠損金額です。前期に納税した法人税額が限度額となります。

適用要件は、欠損事業年度の青色申告書である確定申告書をその提出期限までに提出していることと、確定申告書と同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出することになっています。

この制度は法人税だけです。法人の事業税では還付制度がないため、事業税の添付書類である「欠損金額等の控除明細書」で、通常のように控除していきます。

県民税及び市民税は、還付法人税額を限度として計算した額を、その後の各事業年度(9 年)における法人税割の課税標準となる法人税額から控除することとなります。

具体的には「控除対象還付法人税額又は控除対象個別帰属還付税額の控除明細書」 を使用します。この添付書類を作成していないと、県民税及市民税について欠損金を使用しないことになりますので、留意しましょう。

第98回 給与所得者の特定支出控除

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「給与所得者の特定支出控除」とは、給与所得者が勤務に伴って特定の支出をした場合、その年中の特定支出の額の合計額が「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額」を超えるときは、確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる制度です。平成25年度以後の所得税から適用されています。

そもそも給与所得の金額は、給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いて算出しますが、この給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じて異なります。平成28年度では、12百万円以上の給与収入で2,300千円控除されるのが上限です。平成29年度は10百万円の給与収入で2,200千円控除が上限となります。

「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額」は、平成28年度からは一律に「その年中の給与所得控除額×1/2」となります。給与所得控除額が上限の2,300千円の場合、1,150千円以上支出があれば、所得金額から控除できます。

「特定支出」とは、給与所得者が支出するもので、6つ定められています。通勤費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、勤務必要経費です。勤務必要経費は図書費、衣服費、交際費等となっており、65万円までとなっています。

なお、これらの6つの特定支出は、いずれも給与の支払者が証明したものに限られ、それぞれ証明書の様式が定められています。給与の支払者から補填される部分がある場合には、支給部分は「特定支出」から除かれます。

この「特定支出控除」を受けるためには、確定申告を行う必要があります。

1,800千円以下の給与収入であれば収入金額×40%が給与所得控除額となります。3,000千円の給与所得の場合は給与所得控除は1,200千円です。1,200千円の半分は600千円ですので、これを超える場合に適用となります。

給与所得控除は、サラリーマンの経費を認めているような制度です。それの半分といえども超えるのは、なかなか大変でしょう。