税制改正

平成30年度税制改正① 第168回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

前回まで業承継税制の特例についての特集でした。今回から、それ以外の平成30年度税制改正についてです。まずは個人所得課税です。

配偶者控除は世帯主の所得に応じて逓減していく改正となっています。平成30年度から適用されます。これについては第154回で取り上げていますので、ご参照ください。

他には、給与所得控除及び公的年金等控除の控除額を一律10万円引き下げ、どのような所得にでも適用される基礎控除の控除額を10万円引き上げることとなっています。

給与所得と年金所得の双方を有する方については、どちらかの控除のみが減額されます。働き方の多様化を踏まえ、働き方改革を後押しする等の観点からの改正ということですが、そもそも年金所得の方は通常は働いていないのではと思います。

また、給与所得控除については、諸外国の水準と比べても過大となっていることから漸次適正化するとしています。現状では、給与収入が1,000万円超の場合には220万円の給与所得控除が限度となっています。

改正では、23歳未満の扶養親族を有する者等の子育て世代は負担増減なしとなっています。子育て世代等以外の場合は、給与収入が850万円を超えてから、1,000万円まで徐々に負担が増える仕組みになっています。控除の上限は195万円に減ります。

公的年金等控除については、控除額に上限がなく、手厚い仕組みになっているとの理由から、公的年金等収入が1,000万円を超える場合の控除額に195.5万円の上限を設けるようになります。

これらの改正は、2020年分以後の所得税について適用ですので、平成ではなく新しい元号になってからの適用です。2年後からの適用ですが、このように所得税は重税傾向です。

 

平成30年度税制改正大綱 第151回

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平成29年12月14日に、自民党・公明党から「平成30年度税制改正大綱」が出され、12月22日に閣議決定されました。来年1月に招集される通常国会に税制改正法案が提出されます。

大綱の基本的考え方には「税制面において、働き方の多様化を踏まえ、特定の働き方だけでなく、様々な形で働く人をあまねく応援し、働き方改革を後押しする観点から、個人所得課税について、これまで検討を重ねてきた見直しの方向性に沿って、給与所得控除・公的年金等控除の制度の見直しを図りつつ、一部を基礎控除に振り替えるなどの対応を行う」とあります。

ここ最近の税制改正は、法人は優遇で、個人の課税は厳しい傾向にありましたが、更に個人に重い改正案となっています。

平成に入って法人税率は37.5%で10年間推移し、現在は23.4%です。地方税も含めた実効税率は34.3%となり、以前の法人税率よりも低い税率です。中小企業で800万円までの利益の場合、実効税率は23.5%です。実際に申告書を作ると、以前に比べて随分安くなったと実感します。

これに対して、個人の所得税率は最大で(課税所得4000万円超)45%、地方税を合わせれば55%となります。

今回の税制改正大綱では、更に所得税改革が焦点となり、給与所得控除が一律に10万円減らされます。給与所得控除の上限は220万円から195万円と下げられます。

高齢者についても、年金収入が1000万円超または年金以外の所得が1000万円を超えると増税になります。

事業承継税制については、廃業する中小企業が多く、承継税制が浸透していないという実情に鑑み、10年間の特例措置として、各種要件が緩和され、納税猶予割合を80%から100%に引き上げる抜本的な拡充が行われます。

個人から法人に所得を移すだけで、あるいは事業承継税制を使用するだけで、節税スキームがほぼ不要になるような改正傾向となっています。

 

営業権償却 第150回 

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平成29年度税制改正により、平成29年4月1日以後、M&A等により取得した営業権の償却方法が変更になっています。

従来は、営業権の耐用年数は5年で、年額の5分の1償却となっていました。それが月割償却となっています。そのため、期中で取得した場合は、従来は1年分償却していたものが月割償却になります。

ところで、営業権とは何でしょうか? 営業権とは、法律的な権利関係を基礎とする営業権(代理店契約、ライセンス契約)や超過収益力を背景とする営業権、そして「のれん」などです。

ここで「のれん」とは、「企業結合に関する会計基準」では「取得原価が、受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合には、その超過額は「のれん」として会計処理し、下回る場合には、その不足額は負の「のれん」として取得原価と買収企業の純資産価額との差額になります。

会計上、「のれん」は無形固定資産に計上されます。負の「のれん」は、生じた年に「負ののれん発生利益」として特別利益に計上されます。「のれん」は計上後、20年以内のその効果の及び期間にわたって定額法などの合理的な方法によって償却します。

税務上、「のれん」は、非適格合併等における合併等対価の額と、移転を受けた資産および負債の時価純資産価額との差額を資産(負債)調整勘定とします。資産調整勘定(のれん)は、5年間で償却(損金算入)し、負債調整勘定についても5年間で償却(益金参入)します。

この償却について、税務上は、年間償却から月割償却に改正されています。

少しややこしくなりましたが、「のれん」は営業権に含まれます。

 

 

 

更正の請求 第145回

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申告書を提出した後で、所得金額や税額などを実際より多く申告していたことに気付いたときには、「更正の請求」により還付を受けることができます。この「更正の請求」について、平成 23 年度に改正されています。

平成23年12月2日以後、更正の請求ができる期間が法定申告期限から、1年から5年に延長されました。改正前は、更正の請求の期限を過ぎた課税期間の場合、「更正の申出書」の提出があれば、還付になることもありました。

更正の請求期間が5年となったことに伴い、更正の申出は、平成23年12月2日以後に到来する申告期限の国税については、廃止されています。

更正の請求期間は、原則5年となっており、所得税、相続税、通常の法人税、消費税は5年遡って請求することができます。

贈与税及び移転価格税制に係る法人税についての更正の請求ができる期間は6年(改正前は1年)に、法人税の純損失等の金額に係る更正の請求ができる期間は9年(改正前は1年)に、延長されています。

更正の請求ができる範囲も、大幅に拡大されています。当初申告時に選択適用した場合に限って適用が認められていた「当初申告要件」は一部、廃止され、更正の請求によって還付が認められる範囲が拡大されています。

具体的には、法人税では、受取配当等の益金不算入、所得税額控除、外国税額控除の当初申告要件が外れています。

相続税では、配偶者に対する税額の軽減贈与税の配偶者控除、相続税額から控除する贈与税額相当額などが、当初申告要件から外れています。

誤りに気がついたら、諦めずに早めに更正の請求(還付)しましょう。納税の場合も早めに修正申告をしておきましょう。税務調査で指摘されると、少なくとも税額の10%の加算税を支払うことになります。

第133回 課税売上ゼロの場合の消費税還付

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現在、決算している会社で、当期の課税売上はゼロとなった会社がありました。課税売上がゼロであれば、課税売上割合がゼロとなり、還付もないかと思いきや、申告書ソフトでは還付となります。

改めて確かめると、なんと課税売上がゼロであっても、個別法を採用していれば還付請求ができます。根拠となる条文は、消費税法基本通達11−2−12「課税資産の譲渡等にのみ要するものの異義」に「《個別対応方式による仕入税額控除》に規定する課税資産の譲渡等にのみ要するものとは、課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等をいい」、「課税期間において当該課税仕入れ等に対応する課税資産の譲渡等があったかどうかは問わないことに留意する」とあります。

課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入の例として次のものが揚げられています。

(1) そのまま他に譲渡される課税資産

(2) 課税資産の製造用にのみ消費し、又は使用される原材料、容器、包紙、機械及び装置、工具、器具、備品等

(3) 課税資産に係る倉庫料、運送費、広告宣伝費、支払手数料又は支払加工賃等

ここで例示されているように、課税売上に対する課税仕入に係る消費税が対象となります。

計算式では、

①仮受消費税−②課税売上に係る仮払消費税−③課税売上・非課税売上共通の仮払消費税×課税売上割合

となります。例えば、①=0、②=100,000円、③=200,000円とすると、課税売上割合はゼロですので、

0−100,000−200,000×0=−100,000円

となり、10万円の消費税還付となります。

細かい計算で恐縮です。また、会社を設立したばかりで、課税売上はゼロで、仕入だけが発生していた場合、「消費税課税事業者届出書」を提出して、課税事業者になっていれば、還付となります。ただし、課税売上に対応する課税仕入のみが対象です。

 

 

 

第131回 通勤手当の非課税限度額

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通勤手当の非課税限度額、すなわちこれを超えると給料と見なされ所得税の対象となる金額が、平成28年度税制改正により、給与所得者に支給する通勤手当の非課税限度額が引き上げられており、平成28年1月1日からの適用となっています。

次の3つの場合の最高限度額が10万円から15万円に引き上げられました。

  •  交通期間を利用している人に支給する通勤用定期乗車券
  •  交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当
  •  交通機関又は有料道路を利用するほか、交通用具も使用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券

電車やバスなどの交通機関のみを利用している場合、最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額とされ、上記のように15万円が限度額となります。この場合、グリーン料金は含まれません。

自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当は、通勤距離により別途、定められており、改正はありません。

ここで、タクシー通勤は認められるかという問題があります。営業時間が深夜や早朝などで他の交通機関の利用がなく、交通手段を持たない場合に支給するタクシー代相当額は通勤手当として、非課税限度額まで課税されないとの見解もあります。

しかし、タクシーを利用することが、運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路及び方法の場合というのは非常に稀なことですから、通勤手当とすることはなかなか難しいでしょう。

タクシーを利用する場合は、基本的には旅費交通費として処理することになります。

 

 

 

第130回 宿泊税の導入

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「宿泊税」という税金をご存知ですか? 恥ずかしながら、つい最近まで知りませんでした。大阪のホテルをチェックアウトする際に、明細に「宿泊税」とあります。フロントに尋ねると、大阪府では2017年1月1日から宿泊税が適用されているとのことです。東京都では、すでに2002年10月1日から導入されていました。

納税額は一人一泊につき、次のようになっています。

1万円未満 課税なし

1万円以上1.5万円未満 100円

1.5万円以上2万円未満 200円

2万円以上 300円(東京都は2万円以上も200円)

納入方法は、特別徴収義務者(ホテル経営者)が納税義務者である宿泊者から税金を徴収し、納入します。要はフロント精算の際に請求されます。ここでの1万円は素泊まりの料金で、食事料金などは含みません。

課税の目的は、東京都のHPでは「宿泊税は、国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光振興のための事業、たとえば、旅行者に分かりやすい案内標識の整備、観光案内所の運営、観光情報の提供、観光プロモーションなどの経費に充てるため、東京都が独自に課税をする地方税です」とあります。

ホテルではサービス料を取られ、消費税は課税されており、更に宿泊税ということになります。ただでさえ、ホテル料金は高くなっており、休前日だったら地方のホテルでも普通に1万円を超えます。

会計処理的には、原則、消費税の非課税取引となりますが、宿泊税の名称とその額が明確に表示されていない場合は、宿泊税額分も消費税の課税対象となります(大阪府HP)。

京都府でも2018年度からの導入が検討されており、修学旅行生以外の宿泊者が課税対象となる見込みで、旅館業法の許可を取得していない無許可民泊についても対象になるようです。

第129回 事前確定届出給与

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役員報酬は基本、「定期同額給与」とされ毎月、同額でなければ損金として認められません。上場会社の場合は、3月決算会社の場合、6月の定時株主総会で役員を変更し、7月から役員報酬が改定となる場合が通常です。税務上は会計期間開始の日から3か月を経過する日までに継続して毎年所定の時期にされる定期給与の額の改定は、定期同額給与として認められます。

中小企業の場合は、実務上、期首から変更することが多いと思います。当期の事業計画から役員報酬をはじき出し、12等分して月額を算出します。そのため、オーナー経営者の場合、役員賞与を支給することはあまりありません。

ただし、「事前確定届出給与」の場合は、役員の賞与について損金算入が認められています。事前確定届出給与に関する定めをした場合は、原則として、次のイ又はロのうちいずれか早い日が届出期限です。

イ 株主総会、社員総会の決議によりその定めをした場合におけるその決議をした日から1か月を定期同額給与経過する日

ロ その会計期間開始の日から4か月を経過する日

 上記期限までに「事前確定届出」を税務署に提出しておけば、役員賞与も損金として認められます。ただし、夏に100万円、冬に100万円の賞与を届出しておいて、夏は100万円支払ったけれども、冬には支給できなかった場合、夏の100万円の賞与は損金として認められなくなります。少し増えても、減っても認められません。ですので、あまりお勧めはしていません。

第127回 平成29年度税制改正 ⑥投資促進税制

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

平成29年度税制改正については、中小企業・個人に関係したものということで、一応、今回で最終回にしたいと思います。

中小企業への支援として創設されたのが、「地域経済を牽引する企業向けの投資促進税制」です。企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の一部を改正する法律の改正を前提に、平成31331日までの間に、取得等をする設備について適用されます。

都道府県知事の承認を受けていること、先進性を有する事業であることについて主務大臣の確認を受けていること、設備投資金額が2,000万円以上との要件があります。適用されれば、機械・器具備品については40%の特別償却(または4%の税額控除)、建物等・構築物については20%の特別償却(または2%の税額控除)となります。

また、中小企業投資促進税制の上乗せ措置(生産性向上設備等に係る即時償却等)もあります。中小企業経営強化税制として改組し、器具設備及び建物附属設備を含めた全ての設備が対象となります。適用になれば特別償却、税額控除となりますが、中小企業経営強化法の認定計画に基づくものでなければなりません。

その点では、従来の中小企業投資促進税制の方が使いやすそうです。平成31331日まで2年延長されています。製造業、建設業、卸売業などが指定事業です。機械で1160万円以上、測定工具等で1120万円以上の取得であれば、特別償却30%(または7%の税額控除)が適用されます。通常はこの制度を使用することになります。

一時、太陽光の即時償却が話題になりましたが、一時に償却するため、当たり前のことですが、翌年から償却するものがありません。あまりに多額の資産を一時に償却すると、年度の利益では解消できなくなってしまいます。償却することに変わりはないので、即時償却、特別償却とそれほど気にすることはないのではと思います。

第126回 平成29年度税制改正 ⑤取引相場のない株式の評価の見直し

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

取引相場のない株式の評価方法には、類似業種比準方式、純資産価額方式、類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式、配当還元方式があります。会社の規模により大会社、中会社、小会社に区分され、各々採用する評価方法が異なります。

まず大会社の場合は類似業種比準価額と純資産価額のいずれか低い価額になります。

中会社の場合、評価額=類似業種比準価額×L+純資産価額×(1-L)となります。Lは①総資産価額及び従業員数に応ずる割合、②1年間の取引金額に応ずる割合のうち大きい方の割合を使用します。その割合は0.90.750.6と分かれています。

小会社はLの割合が0.5となります。

大・中・小の会社の区分について改正されています。大会社の従業員基準が100人以上から70以上に下がっています。取引金額基準では特に卸売業の場合、80億円から30億円に減額になっています。より多くの会社が大会社に区分されるようになります。

中会社のLの割合適用区分が見直されています。例えば、卸売業では大会社に近い0.9の割合基準ですが、純資産価額基準が14億円から4億円と減額になり、取引金額基準が50億円以上から7億円以上と減額になっています。

また、類似業種比準価額の計算方法において、平成12年改正で配当比準値:利益比準値:純資産比準値=111であったものを131としていましたが、今回の改正で元の111に戻っています。役員退職金で多額の経費を計上して赤字になっても、評価に与える影響が小さくなります。

類似業種の株価は課税時期の属する月以前3ヶ月間のうち最も低いものを採用しますが、今回の改正により、課税期間の属する月以前2年間の平均株価によることが選択できるようになりました。

平成2911日以後の相続等により取得した財産の評価に適用されますので、遡及しての適用です。類似業種比準方式の見直しは、中小企業の相続税や贈与税負担を軽減することを目的とするとされていますが、実際に具体例で算出してみないと何とも言えません。