税制改正

法人の実効税率 第172回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

法人税の税率は3月決算の場合、平成30年3月期は23.4%ですが、平成31年3月期から23.2%と0.2%低くなります。法人住民税(都道府県税、市町村民税)、法人事業税を含めた実効税率は、中小企業では通常、平成30年3月期が33.7%、平成31年3月期からは33.5%となります。

昭和の時代には法人税だけで43.3%もありました。平成2年からは37.5%となり、平成11年から30%となって、ここ数年段階的に下がってきています。年配の社長さんとお話しすると、儲かった分の半分は税金という感覚です。地方税も入れるとほぼそれに近いところでした。

ところが平成30年3月期では地方税を含めた実効税率でも33.7%、来年は更に0.2%減ります。

これに対して、所得税は平成27年度からは最高税率が45%となり(ただし控除額は4,796千円)、地方税10%を加えると55%が税金ということになります。課税所得が4,000万円超の場合に45%となり、対象者はそうそう多くないと思いますが、

その下の40%の税率は1,800万円超の場合です。こちらは対象者がグンと増えそうです。所得税率40%の人は、地方税を加えて50%となり、まさに半分は税金です。

所得税の場合は、さまざまな控除があり、所得に応じた控除額もありますので、単純に半分とはいえませんが、税率50%は、法人実効税率33.7%と比較すると、重税感があります。

法人優遇で、個人にきつい税制となっています。中小企業の場合、社長の個人口座よりも、会社に残す方が税金を考慮すれば、お金を残しやすくなっています。貯まった法人の預金から個人に移転するには、最後は退職金ということになりますが、こちらは控除額は年数に応じて増え、さらに所得を半分にしますので低い税率になります。

個人・法人の税率を考慮し、お金を残していきましょう。

 

平成30年度税制改正③ 第170回 

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国際会計基準審議会は、平成26年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IFRS15)を公表し、IFRS15は平成30年1月1日以後開始年度から、適用されることになっています。

日本では、平成30年3月30日に、「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」を公表しています。

平成30年度税制改正では、この収益認識会計基準の創設を踏まえ、法人税法の所得計算を規定する第22条第4項の「別段の定め」として,第22条の2が創設されています。

「収益の計上額」について、会計基準では、値引き、割戻し、返品、回収不能等、取引の対価に変動性のある金額が含まれる場合、その金額を見積って収益を認識します。

一方、法人税法では、返品と回収不能については、その可能性がある場合でも「収益の計上額」に織り込めないとしています。それに伴い返品調整引当金は廃止されています。

国際会計基準(IFAS)が適用されない中小企業については、今回の改正では、長期割賦販売等の延払基準と返品調整引当金が廃止されたこと以外は影響は生じません。

返品調整引当金制度は、平成33年3月31日までに開始する各事業年度については現行どおりの損金算入限度額による引当を認め、平成33年4月1日以後の10年間で、従来の損金算入限度額に対して1年ごとに10分の1ずつ縮小した額の引当てを認める等の経過措置を講じています。

長期割賦販売等に該当する資産の販売等について延払基準により収益の額 及び費用の額を計算する選択制度は廃止されます。平成35年3月31日以前に開始する事業年度においては、引き続き従前の「延払基準」を適用できる経過措置が講じられています。

平成30年度税制改正② 第169回 

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先週の個人所得課税改正に、もう一つあります。基礎控除は現状の38万円から48万円に増額になりますが、所得に応じて逓減していくことになります。

具体的には所得金額が2,400万円超の場合は32万円の基礎控除となり、2,450万円超で16万円、2,500万円超で基礎控除はゼロとなります。

次に法人税について、中小企業に関係する改正は、所得拡大税制の改組です。従来の所得拡大税制は平成30年3月31日開始事業年度までとなります。具体的には、3月決算の場合は、平成30年3月期までで従来の所得拡大税制は終了となります。

平成30年4月1日から2021年3月31日までの間に開始する事業年度は、新たな賃上げ促進税制となります。中小企業における持続的な賃上げを促します。更に高い賃上げを行い、かつ、教育訓練費増加等の要件を満たす場合には、税額控除率が上乗せされます。

要件は、継続雇用者の給与等支給額が対前年度より1.5%増加していることだけです。従来の要件から、基準年度よりも3%増加していること、平均給与等支給額が前事業年度から増加していることの要件がなくなりました。給与等支給額の増加のみの要件となっています。

税額控除は給与等支給額の対前年度増加額の15%となります。ただし、法人税額の20%が限度です。

加えて、継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率が2.5%以上であって、かつ、教育訓練費増加等の要件を満たす場合には、税額控除率が10%上乗せとなり、対前年度増加額の25%の税額控除となります。

ここで、教育訓練費増加等の要件とは、①当期の教育訓練費が前期の教育訓練費の1.1倍となること、または②中小企業等経営強化法で認定された経営力向上が確実に行われたことの証明があれば10%の上乗せとなります。

また、今までの所得拡大税制では設立1期目から適用可能でしたが、改正後は1期目からの適用はなくなっています。

 

平成30年度税制改正① 第168回 

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前回まで業承継税制の特例についての特集でした。今回から、それ以外の平成30年度税制改正についてです。まずは個人所得課税です。

配偶者控除は世帯主の所得に応じて逓減していく改正となっています。平成30年度から適用されます。これについては第154回で取り上げていますので、ご参照ください。

他には、給与所得控除及び公的年金等控除の控除額を一律10万円引き下げ、どのような所得にでも適用される基礎控除の控除額を10万円引き上げることとなっています。

給与所得と年金所得の双方を有する方については、どちらかの控除のみが減額されます。働き方の多様化を踏まえ、働き方改革を後押しする等の観点からの改正ということですが、そもそも年金所得の方は通常は働いていないのではと思います。

また、給与所得控除については、諸外国の水準と比べても過大となっていることから漸次適正化するとしています。現状では、給与収入が1,000万円超の場合には220万円の給与所得控除が限度となっています。

改正では、23歳未満の扶養親族を有する者等の子育て世代は負担増減なしとなっています。子育て世代等以外の場合は、給与収入が850万円を超えてから、1,000万円まで徐々に負担が増える仕組みになっています。控除の上限は195万円に減ります。

公的年金等控除については、控除額に上限がなく、手厚い仕組みになっているとの理由から、公的年金等収入が1,000万円を超える場合の控除額に195.5万円の上限を設けるようになります。

これらの改正は、2020年分以後の所得税について適用ですので、平成ではなく新しい元号になってからの適用です。2年後からの適用ですが、このように所得税は重税傾向です。

 

平成30年度税制改正大綱 第151回

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

平成29年12月14日に、自民党・公明党から「平成30年度税制改正大綱」が出され、12月22日に閣議決定されました。来年1月に招集される通常国会に税制改正法案が提出されます。

大綱の基本的考え方には「税制面において、働き方の多様化を踏まえ、特定の働き方だけでなく、様々な形で働く人をあまねく応援し、働き方改革を後押しする観点から、個人所得課税について、これまで検討を重ねてきた見直しの方向性に沿って、給与所得控除・公的年金等控除の制度の見直しを図りつつ、一部を基礎控除に振り替えるなどの対応を行う」とあります。

ここ最近の税制改正は、法人は優遇で、個人の課税は厳しい傾向にありましたが、更に個人に重い改正案となっています。

平成に入って法人税率は37.5%で10年間推移し、現在は23.4%です。地方税も含めた実効税率は34.3%となり、以前の法人税率よりも低い税率です。中小企業で800万円までの利益の場合、実効税率は23.5%です。実際に申告書を作ると、以前に比べて随分安くなったと実感します。

これに対して、個人の所得税率は最大で(課税所得4000万円超)45%、地方税を合わせれば55%となります。

今回の税制改正大綱では、更に所得税改革が焦点となり、給与所得控除が一律に10万円減らされます。給与所得控除の上限は220万円から195万円と下げられます。

高齢者についても、年金収入が1000万円超または年金以外の所得が1000万円を超えると増税になります。

事業承継税制については、廃業する中小企業が多く、承継税制が浸透していないという実情に鑑み、10年間の特例措置として、各種要件が緩和され、納税猶予割合を80%から100%に引き上げる抜本的な拡充が行われます。

個人から法人に所得を移すだけで、あるいは事業承継税制を使用するだけで、節税スキームがほぼ不要になるような改正傾向となっています。

 

営業権償却 第150回 

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平成29年度税制改正により、平成29年4月1日以後、M&A等により取得した営業権の償却方法が変更になっています。

従来は、営業権の耐用年数は5年で、年額の5分の1償却となっていました。それが月割償却となっています。そのため、期中で取得した場合は、従来は1年分償却していたものが月割償却になります。

ところで、営業権とは何でしょうか? 営業権とは、法律的な権利関係を基礎とする営業権(代理店契約、ライセンス契約)や超過収益力を背景とする営業権、そして「のれん」などです。

ここで「のれん」とは、「企業結合に関する会計基準」では「取得原価が、受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合には、その超過額は「のれん」として会計処理し、下回る場合には、その不足額は負の「のれん」として取得原価と買収企業の純資産価額との差額になります。

会計上、「のれん」は無形固定資産に計上されます。負の「のれん」は、生じた年に「負ののれん発生利益」として特別利益に計上されます。「のれん」は計上後、20年以内のその効果の及び期間にわたって定額法などの合理的な方法によって償却します。

税務上、「のれん」は、非適格合併等における合併等対価の額と、移転を受けた資産および負債の時価純資産価額との差額を資産(負債)調整勘定とします。資産調整勘定(のれん)は、5年間で償却(損金算入)し、負債調整勘定についても5年間で償却(益金参入)します。

この償却について、税務上は、年間償却から月割償却に改正されています。

少しややこしくなりましたが、「のれん」は営業権に含まれます。

 

 

 

更正の請求 第145回

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申告書を提出した後で、所得金額や税額などを実際より多く申告していたことに気付いたときには、「更正の請求」により還付を受けることができます。この「更正の請求」について、平成 23 年度に改正されています。

平成23年12月2日以後、更正の請求ができる期間が法定申告期限から、1年から5年に延長されました。改正前は、更正の請求の期限を過ぎた課税期間の場合、「更正の申出書」の提出があれば、還付になることもありました。

更正の請求期間が5年となったことに伴い、更正の申出は、平成23年12月2日以後に到来する申告期限の国税については、廃止されています。

更正の請求期間は、原則5年となっており、所得税、相続税、通常の法人税、消費税は5年遡って請求することができます。

贈与税及び移転価格税制に係る法人税についての更正の請求ができる期間は6年(改正前は1年)に、法人税の純損失等の金額に係る更正の請求ができる期間は9年(改正前は1年)に、延長されています。

更正の請求ができる範囲も、大幅に拡大されています。当初申告時に選択適用した場合に限って適用が認められていた「当初申告要件」は一部、廃止され、更正の請求によって還付が認められる範囲が拡大されています。

具体的には、法人税では、受取配当等の益金不算入、所得税額控除、外国税額控除の当初申告要件が外れています。

相続税では、配偶者に対する税額の軽減贈与税の配偶者控除、相続税額から控除する贈与税額相当額などが、当初申告要件から外れています。

誤りに気がついたら、諦めずに早めに更正の請求(還付)しましょう。納税の場合も早めに修正申告をしておきましょう。税務調査で指摘されると、少なくとも税額の10%の加算税を支払うことになります。

第133回 課税売上ゼロの場合の消費税還付

元気ですか! 福岡の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

現在、決算している会社で、当期の課税売上はゼロとなった会社がありました。課税売上がゼロであれば、課税売上割合がゼロとなり、還付もないかと思いきや、申告書ソフトでは還付となります。

改めて確かめると、なんと課税売上がゼロであっても、個別法を採用していれば還付請求ができます。根拠となる条文は、消費税法基本通達11−2−12「課税資産の譲渡等にのみ要するものの異義」に「《個別対応方式による仕入税額控除》に規定する課税資産の譲渡等にのみ要するものとは、課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等をいい」、「課税期間において当該課税仕入れ等に対応する課税資産の譲渡等があったかどうかは問わないことに留意する」とあります。

課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入の例として次のものが揚げられています。

(1) そのまま他に譲渡される課税資産

(2) 課税資産の製造用にのみ消費し、又は使用される原材料、容器、包紙、機械及び装置、工具、器具、備品等

(3) 課税資産に係る倉庫料、運送費、広告宣伝費、支払手数料又は支払加工賃等

ここで例示されているように、課税売上に対する課税仕入に係る消費税が対象となります。

計算式では、

①仮受消費税−②課税売上に係る仮払消費税−③課税売上・非課税売上共通の仮払消費税×課税売上割合

となります。例えば、①=0、②=100,000円、③=200,000円とすると、課税売上割合はゼロですので、

0−100,000−200,000×0=−100,000円

となり、10万円の消費税還付となります。

細かい計算で恐縮です。また、会社を設立したばかりで、課税売上はゼロで、仕入だけが発生していた場合、「消費税課税事業者届出書」を提出して、課税事業者になっていれば、還付となります。ただし、課税売上に対応する課税仕入のみが対象です。

 

 

 

第131回 通勤手当の非課税限度額

元気ですか! 福岡の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

通勤手当の非課税限度額、すなわちこれを超えると給料と見なされ所得税の対象となる金額が、平成28年度税制改正により、給与所得者に支給する通勤手当の非課税限度額が引き上げられており、平成28年1月1日からの適用となっています。

次の3つの場合の最高限度額が10万円から15万円に引き上げられました。

  •  交通期間を利用している人に支給する通勤用定期乗車券
  •  交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当
  •  交通機関又は有料道路を利用するほか、交通用具も使用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券

電車やバスなどの交通機関のみを利用している場合、最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額とされ、上記のように15万円が限度額となります。この場合、グリーン料金は含まれません。

自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当は、通勤距離により別途、定められており、改正はありません。

ここで、タクシー通勤は認められるかという問題があります。営業時間が深夜や早朝などで他の交通機関の利用がなく、交通手段を持たない場合に支給するタクシー代相当額は通勤手当として、非課税限度額まで課税されないとの見解もあります。

しかし、タクシーを利用することが、運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路及び方法の場合というのは非常に稀なことですから、通勤手当とすることはなかなか難しいでしょう。

タクシーを利用する場合は、基本的には旅費交通費として処理することになります。

 

 

 

第130回 宿泊税の導入

元気ですか! 福岡の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

「宿泊税」という税金をご存知ですか? 恥ずかしながら、つい最近まで知りませんでした。大阪のホテルをチェックアウトする際に、明細に「宿泊税」とあります。フロントに尋ねると、大阪府では2017年1月1日から宿泊税が適用されているとのことです。東京都では、すでに2002年10月1日から導入されていました。

納税額は一人一泊につき、次のようになっています。

1万円未満 課税なし

1万円以上1.5万円未満 100円

1.5万円以上2万円未満 200円

2万円以上 300円(東京都は2万円以上も200円)

納入方法は、特別徴収義務者(ホテル経営者)が納税義務者である宿泊者から税金を徴収し、納入します。要はフロント精算の際に請求されます。ここでの1万円は素泊まりの料金で、食事料金などは含みません。

課税の目的は、東京都のHPでは「宿泊税は、国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光振興のための事業、たとえば、旅行者に分かりやすい案内標識の整備、観光案内所の運営、観光情報の提供、観光プロモーションなどの経費に充てるため、東京都が独自に課税をする地方税です」とあります。

ホテルではサービス料を取られ、消費税は課税されており、更に宿泊税ということになります。ただでさえ、ホテル料金は高くなっており、休前日だったら地方のホテルでも普通に1万円を超えます。

会計処理的には、原則、消費税の非課税取引となりますが、宿泊税の名称とその額が明確に表示されていない場合は、宿泊税額分も消費税の課税対象となります(大阪府HP)。

京都府でも2018年度からの導入が検討されており、修学旅行生以外の宿泊者が課税対象となる見込みで、旅館業法の許可を取得していない無許可民泊についても対象になるようです。