税制改正

令和元年度 税制改正④その他 第210回

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

税制改正4回目は個人課税、資産課税、法人課税以外で目についた改正事項です。令和元年10月からの消費税増税については、改めて特集の予定です。

教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、2年延長され令和3年3月31日までとなりました。改正前では30歳到達時に、その時点の残高に対して贈与税が課税されていました。

改正後は、 30歳到達時において、現に学校等に在学している場合には、その時点で残高があっても、贈与税を課税しないこととなりました。学校在籍しなくなった時の残高に対して贈与税が課税されます。

結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、贈与者は金融機関に子・孫名義の口座等を開設し、結婚・子育て資金を一括して拠出し、この資金について、子・孫ごとに1,000万円を非課税とされる制度です。これも2年延長となり令和3年3月31日までとなりました。

改正後は、贈与があった年の前年の受贈者の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、適用できないこととなっています。

個人的に興味があったのは、金地金等の密輸に対応するための消費税における仕入税額控除の見直しです。改正前では、金地金等の課税仕入については、密輸品であったとしても、課税仕入れ等の事実を記載した帳簿を保存することにより、 仕入税額控除が可能となっていました。

改正後は、密輸品と知りながら行った課税仕入について、仕入税額控除を認めないこととなりました。これは平成31年4月1日からの適用です。令和元年10月1日からは、金地金等に係る仕入税額控除について、帳簿の保存に加え、「本人確認書類の写し」の保存が要件として追加されることになります。

令和元年度 税制改正③法人課税 第209回

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税制改正3回目は法人課税です。あまり大きな改正はありません。1つ目は、イノベーション促進のための研究開発税制の見直しです。これは中小企業にとってはあまり関係のないところです。

そこで2つ目は、中堅・中小・小規模事業者の支援です。中小企業者等の法人税の軽減税率15%の特例の適用期限を2年延長し、令和2年度末までとなります。本則では19%ですが、平成24年から15%と下がったままです。

課税所得が800万円以下の場合はこの15%を使用しますので、住民税・事業税を含めた実行税率は、23.5%となります。800万円を超えた部分に対しては法人税率は23.2%で実効税率は34.0%です。法人税は随分と軽減されてきました。

中小企業経営強化税制は適用期限を2年延長されます。生産性向上設備(生産性が年1%改善する設備)、収益力強化設備(投資収益率が5%以上の設備)で中小企業等経営強化法の認定計画に基づくものであれば、即時償却または7%の税額控除(資本金30百万円以下であれば10%)が適用されます。

この場合、即時償却はとても良さそうに見えます。しかし、償却期間を通してみれば税額は変わりません。それよりも税額控除の方を選択すべきと思います。

中小企業投資促進税制も2年延長となっており、特別償却30%または税額控除7%の選択です。

また、中小企業における災害に対する事前対策のため、防災・減災設備への投資について、特別償却20%ができる措置を講じています。主務大臣の定める中小企業者の事業継続力強化に関する基本方針に照らし適切なものとの条件が入っています。

令和元年度 税制改正 ①所得税 第207回

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令和元年度税制改正の第1回として、今回は所得税です。税制大綱には「消費税率の引上げに際し、需要変動の平準化等の観点から、住宅に対する税制上の支援策を講ずる」と記載されています。

消費税率10%が適用される住宅取得等について、住宅ローン控除の控除期間を10年間から13年間に3年延長されます。ただし、11年目以降の3年間については消費税率2%引き上げ分の負担に着目した控除額となります。

一般の住宅(認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅以外の住宅)の場合 次に掲げる金額のいずれか少ない金額になります。

①住宅借入金等の年末残高(4,000万円を限度)の1%

②建物購入価格(税抜)(4,000万円を限度)2/3%

3年間で消費税増税分にあたる建物購入価格の2%の範囲内で減税を行い、住宅ローン残高が少ない場合は、従来通り年末残高に応じて減税されます。

入居1~10年目は改正前と同様の税額控除となります。ローン残高の1%控除され、各年、最大で40万円の控除です。認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅の場合は、建物購入価格、住宅ローン年末残高の控除対象限度額は5,000万円になります。

平成31年4月1日以後に提出する給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の「特別控除申告書については、①住宅の取得等をした年月日、②居住の用に供した年月日、③住宅の取得等の対価の額、④住宅の取得等をした家屋の床面積の記載を要しなくなります。

替わって、これらは住宅ローンを有する場合の所得税額の「特別控除証明書」の記載事項となります。

いずれにしても、あまり大きな改正ではありません。

所得拡大促進税制の改正 第200回 

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所得拡大促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(または所得税)から税額控除できる制度です。

平成30年4月1日以降に開始される事業年度(個人事業主については平成31年分)から は制度が大きく変更されます。今のところ、2021年3月31日までに開始される事業年度が対象となります。「通常」と「上乗せ」の2段階になっています。

「通常」の場合は、適用の要件を満たす場合、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額(給与の増加)の15%を税額控除します。ただし、調整前法人税額の20%が上限となります。

適用の要件は、継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額(前年度継続雇用者給与金額)と比べて1.5%以上増加していることです。継続雇用者とは、前事業年度の期首から適用年度の期末までの期間の全ての月分の給与 等の支給を受けており、一般被保険者であった者が継続雇用者となります。

従来の所得拡大促進税制との違いは、基準年度(H24年度)の給与総額と比べて、適用年度において一定割合増加していることが廃止されました。また、平均給与等支給額が前年度以上であった要件が「継続雇用者給与等支給額が前年度比1.5%以上増加」に変更されています。

「上乗せ」は、前年度継続雇用者給与よりも2.5%増加している場合、税額控除が25%となります。「通常」と同様に、調整前法人税額の20%が上限となります。

ただし、「上乗せ」には次の二つの要件が加わります。

  • 適用年度における教育訓練費の額が前事業年度における教育訓練費の額と比 べて10%以上増加していること
  • 中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けていること。

この要件はちょっと厳しいですね。

 

 

「平成31年度税制改正大綱」 第196回 

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平成30年12月21日に「平成31年度税制改正大綱」が閣議決定されました。今回は目玉になるような大きな改正はないようです。ただ平成31年10月から消費税率が10%引き上げられることに伴い車と住宅の減税措置を施しています。

日本銀行の試算では、消費税率引き上げにより家計の負担額は5.6兆円増加するそうです。軽減税率で1兆円、教育無償化で1.4兆円の減少などを見込み、純額では負担は2.2兆円としています。ただし、教育無償化は「大胆な前提をもとに試算した」とありますので、鵜呑みにはできません。

今回の税制改正大綱では、消費税引き上げの反動を重視して、次のような減税措置を施しています。

①自動車に係る措置

平成31年10月1日以後に新車新規登録を受けた自家用乗用車について、小型自動車を中心に全ての区分において、自動車税の税率が引き下げられます。

また、自動車の取得時の負担感を緩和するため、平成31年10月1日から平成32年9月30日までの間に自家用乗用車を取得した場合、環境性能割の税率が1%分軽減されます。

②住宅に係る措置

平成32年末までの間、消費税率10%が適用される住宅取得等について、住宅ローン控除の控除期間を3年延長し13年間となります。

10年目までは年末の借入残高(上限4千万円)の1%を所得税などから控除する今の仕組みのままで、11年目以降は戸建て住宅やマンションの建物価格の2%分を3年かけて控除することになります。

消費税増税後の単年度ベースで車と住宅あわせて1,670億円の減税となるとしていますが、負担額2.2兆円にはまだまだ及びません。消費税増税が経済全体に与える影響が心配です。

 

法人の実効税率 第172回 

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法人税の税率は3月決算の場合、平成30年3月期は23.4%ですが、平成31年3月期から23.2%と0.2%低くなります。法人住民税(都道府県税、市町村民税)、法人事業税を含めた実効税率は、中小企業では通常、平成30年3月期が33.7%、平成31年3月期からは33.5%となります。

昭和の時代には法人税だけで43.3%もありました。平成2年からは37.5%となり、平成11年から30%となって、ここ数年段階的に下がってきています。年配の社長さんとお話しすると、儲かった分の半分は税金という感覚です。地方税も入れるとほぼそれに近いところでした。

ところが平成30年3月期では地方税を含めた実効税率でも33.7%、来年は更に0.2%減ります。

これに対して、所得税は平成27年度からは最高税率が45%となり(ただし控除額は4,796千円)、地方税10%を加えると55%が税金ということになります。課税所得が4,000万円超の場合に45%となり、対象者はそうそう多くないと思いますが、

その下の40%の税率は1,800万円超の場合です。こちらは対象者がグンと増えそうです。所得税率40%の人は、地方税を加えて50%となり、まさに半分は税金です。

所得税の場合は、さまざまな控除があり、所得に応じた控除額もありますので、単純に半分とはいえませんが、税率50%は、法人実効税率33.7%と比較すると、重税感があります。

法人優遇で、個人にきつい税制となっています。中小企業の場合、社長の個人口座よりも、会社に残す方が税金を考慮すれば、お金を残しやすくなっています。貯まった法人の預金から個人に移転するには、最後は退職金ということになりますが、こちらは控除額は年数に応じて増え、さらに所得を半分にしますので低い税率になります。

個人・法人の税率を考慮し、お金を残していきましょう。

 

平成30年度税制改正③ 第170回 

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国際会計基準審議会は、平成26年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IFRS15)を公表し、IFRS15は平成30年1月1日以後開始年度から、適用されることになっています。

日本では、平成30年3月30日に、「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」を公表しています。

平成30年度税制改正では、この収益認識会計基準の創設を踏まえ、法人税法の所得計算を規定する第22条第4項の「別段の定め」として,第22条の2が創設されています。

「収益の計上額」について、会計基準では、値引き、割戻し、返品、回収不能等、取引の対価に変動性のある金額が含まれる場合、その金額を見積って収益を認識します。

一方、法人税法では、返品と回収不能については、その可能性がある場合でも「収益の計上額」に織り込めないとしています。それに伴い返品調整引当金は廃止されています。

国際会計基準(IFAS)が適用されない中小企業については、今回の改正では、長期割賦販売等の延払基準と返品調整引当金が廃止されたこと以外は影響は生じません。

返品調整引当金制度は、平成33年3月31日までに開始する各事業年度については現行どおりの損金算入限度額による引当を認め、平成33年4月1日以後の10年間で、従来の損金算入限度額に対して1年ごとに10分の1ずつ縮小した額の引当てを認める等の経過措置を講じています。

長期割賦販売等に該当する資産の販売等について延払基準により収益の額 及び費用の額を計算する選択制度は廃止されます。平成35年3月31日以前に開始する事業年度においては、引き続き従前の「延払基準」を適用できる経過措置が講じられています。

平成30年度税制改正② 第169回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

先週の個人所得課税改正に、もう一つあります。基礎控除は現状の38万円から48万円に増額になりますが、所得に応じて逓減していくことになります。

具体的には所得金額が2,400万円超の場合は32万円の基礎控除となり、2,450万円超で16万円、2,500万円超で基礎控除はゼロとなります。

次に法人税について、中小企業に関係する改正は、所得拡大税制の改組です。従来の所得拡大税制は平成30年3月31日開始事業年度までとなります。具体的には、3月決算の場合は、平成30年3月期までで従来の所得拡大税制は終了となります。

平成30年4月1日から2021年3月31日までの間に開始する事業年度は、新たな賃上げ促進税制となります。中小企業における持続的な賃上げを促します。更に高い賃上げを行い、かつ、教育訓練費増加等の要件を満たす場合には、税額控除率が上乗せされます。

要件は、継続雇用者の給与等支給額が対前年度より1.5%増加していることだけです。従来の要件から、基準年度よりも3%増加していること、平均給与等支給額が前事業年度から増加していることの要件がなくなりました。給与等支給額の増加のみの要件となっています。

税額控除は給与等支給額の対前年度増加額の15%となります。ただし、法人税額の20%が限度です。

加えて、継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率が2.5%以上であって、かつ、教育訓練費増加等の要件を満たす場合には、税額控除率が10%上乗せとなり、対前年度増加額の25%の税額控除となります。

ここで、教育訓練費増加等の要件とは、①当期の教育訓練費が前期の教育訓練費の1.1倍となること、または②中小企業等経営強化法で認定された経営力向上が確実に行われたことの証明があれば10%の上乗せとなります。

また、今までの所得拡大税制では設立1期目から適用可能でしたが、改正後は1期目からの適用はなくなっています。

 

平成30年度税制改正① 第168回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

前回まで業承継税制の特例についての特集でした。今回から、それ以外の平成30年度税制改正についてです。まずは個人所得課税です。

配偶者控除は世帯主の所得に応じて逓減していく改正となっています。平成30年度から適用されます。これについては第154回で取り上げていますので、ご参照ください。

他には、給与所得控除及び公的年金等控除の控除額を一律10万円引き下げ、どのような所得にでも適用される基礎控除の控除額を10万円引き上げることとなっています。

給与所得と年金所得の双方を有する方については、どちらかの控除のみが減額されます。働き方の多様化を踏まえ、働き方改革を後押しする等の観点からの改正ということですが、そもそも年金所得の方は通常は働いていないのではと思います。

また、給与所得控除については、諸外国の水準と比べても過大となっていることから漸次適正化するとしています。現状では、給与収入が1,000万円超の場合には220万円の給与所得控除が限度となっています。

改正では、23歳未満の扶養親族を有する者等の子育て世代は負担増減なしとなっています。子育て世代等以外の場合は、給与収入が850万円を超えてから、1,000万円まで徐々に負担が増える仕組みになっています。控除の上限は195万円に減ります。

公的年金等控除については、控除額に上限がなく、手厚い仕組みになっているとの理由から、公的年金等収入が1,000万円を超える場合の控除額に195.5万円の上限を設けるようになります。

これらの改正は、2020年分以後の所得税について適用ですので、平成ではなく新しい元号になってからの適用です。2年後からの適用ですが、このように所得税は重税傾向です。

 

平成30年度税制改正大綱 第151回

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

平成29年12月14日に、自民党・公明党から「平成30年度税制改正大綱」が出され、12月22日に閣議決定されました。来年1月に招集される通常国会に税制改正法案が提出されます。

大綱の基本的考え方には「税制面において、働き方の多様化を踏まえ、特定の働き方だけでなく、様々な形で働く人をあまねく応援し、働き方改革を後押しする観点から、個人所得課税について、これまで検討を重ねてきた見直しの方向性に沿って、給与所得控除・公的年金等控除の制度の見直しを図りつつ、一部を基礎控除に振り替えるなどの対応を行う」とあります。

ここ最近の税制改正は、法人は優遇で、個人の課税は厳しい傾向にありましたが、更に個人に重い改正案となっています。

平成に入って法人税率は37.5%で10年間推移し、現在は23.4%です。地方税も含めた実効税率は34.3%となり、以前の法人税率よりも低い税率です。中小企業で800万円までの利益の場合、実効税率は23.5%です。実際に申告書を作ると、以前に比べて随分安くなったと実感します。

これに対して、個人の所得税率は最大で(課税所得4000万円超)45%、地方税を合わせれば55%となります。

今回の税制改正大綱では、更に所得税改革が焦点となり、給与所得控除が一律に10万円減らされます。給与所得控除の上限は220万円から195万円と下げられます。

高齢者についても、年金収入が1000万円超または年金以外の所得が1000万円を超えると増税になります。

事業承継税制については、廃業する中小企業が多く、承継税制が浸透していないという実情に鑑み、10年間の特例措置として、各種要件が緩和され、納税猶予割合を80%から100%に引き上げる抜本的な拡充が行われます。

個人から法人に所得を移すだけで、あるいは事業承継税制を使用するだけで、節税スキームがほぼ不要になるような改正傾向となっています。