相続税

第280回 不動産評価で鑑定評価額を採用の最高裁判決

令和4年4月19日、最高裁判所第三小法廷において、不動産の相続税評価を財産評価基本通達6項に基づく鑑定評価額を採用するか否かで争われた事件について、国側の鑑定評価額を認め、納税者の上告を棄却した判決が下りました。通常、相続税の申告で、土地を評価する場合は路線価を用います。原告は路線価に基づいて申告し、申告額はゼロとなっていました。路線価に基づいて3億円で評価していた土地が、税務調査では鑑定評価額の12億円とされ、追徴課税となっていた事例です。

ここで財産評価基本通達6項とは「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」というものです。東京地裁、東京高裁ともに、この評価通達6項の適用を認め、国側の鑑定評価額を支持していたため、最高裁に上告していました。

判決では、通達評価額と鑑定評価額に大きなかい離だけをもって評価通達6項を適用するような事情があるとはいえないとしています。この事例では、相続税対策として、90才代の父親が10億円の借入金をして13億円の不動産を取得しています。路線価評価額は3億円ですので、相続財産が7億円減少しており(3-10億円)、相続税額がゼロとなった節税の意図が重視されています。

通達評価額と鑑定評価額が大きくかい離しているだけでは足りず、そこに介在する被相続人などの節税意図やその行為を必要としていることが注目されます。同6項の明確な適用基準は示されませんでしたが、最高裁判決として同6項の適用を認めたことで、適用にお墨付きが与えられたとも言えます。節税対策が否定されたともいえます。

裁判官5名の全員一致の意見で、鑑定評価額の評価することを適法であると判示しました。最高裁といえども国の機関である以上、どうしても国側に有利の判断になるようです。どうも結論ありきの判決ではないかとも思えてしまいます。

「暦年贈与」改正の見送り 第271回

令和4年度税制改正大綱が公表されました。今回の改正では「暦年贈与」が廃止されるのではとの噂が流れていました。複数のお客様から「暦年贈与」の廃止について問合せを受けていました。現状の「暦年贈与」では相続発生前3年間に行われた贈与は、相続税の対象となると、通称「持ち戻し」と呼ばれる規定があります。

一部週刊誌では、今後はこの持ち戻し期間が3年から15年に延長される可能性があるとしていました。持ち戻し期間が15年となると今さら贈与しても手遅れというアキラメの雰囲気になってきます。将来的には「暦年贈与」そのものが廃止されるのではと予想しています。

今回の税制改正大綱を見ると、資産課税のうち、相続税・贈与税については住宅取得資金の贈与税の非課税措置が2年延長になったのみの改正です。あれだけ話題になっておいて肩透かしを食らったような感じです。少なくとも令和4年は「暦年贈与」が認められることになります。ただし、税制改正大綱の「基本的考え方」には、

「今後、諸外国の制度も参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。あわせて、経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置は、限度額の範囲内では家庭内における資産の移転に対して何らの税負担も求めない制度となっていることから、そのあり方について、格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある」

としていますので、「暦年贈与」は遅かれ速かれ見直されるようです。出来るうちにしておきましょう。