確定申告

第293回 「雑所得」が明確化され事業所得の赤字として所得通算することが不可に

令和4年10月7日に、国税庁は副業収入の所得区分に関する改正を公表しました。令和4年分以後、今年の所得税から適用されます。まず、雑所得の範囲が明確化されています。すなわち「公的年金等に係る雑所得」「業務に係る雑所得」「その他雑所得」の3つに区分されます。

「その他雑所得」の例示として新たに「譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生ずる所得」が加えられました。「譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生ずる所得」には、例えば、暗号資産取引による所得等が該当するとされています。

また、「業務に係る雑所得」には、「営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得」が含まれることが明確化されています。これはデジタルコンテンツの販売による所得などが該当します。

更に「事業所得」と「雑所得(業務に係る雑所得)」の判定基準も示されています。すなわち「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する」としています。

所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合は、業務に係る雑所得に該当するとなっています。ただし、帳簿書類の保存があっても、次の場合には、自動的に事業所得に区分されるわけではなく、個別に判断するとしています。

① その所得の収入金額が僅少と認められる場合

② その所得を得る活動に営利性が認められない場合

①は、収入金額が300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満の場合に「僅少」に該当します。②は、所得が例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合が「営利性が認められない」となります。本来は事業的規模といえない副業収入を赤字の事業所得として申告して、給与所得と損益通算するという節税スキームを防ぐためのようです。

65万円の青色申告控除 第276回

今日は令和4年3月15日です。確定申告の締切日です。昨日、国税庁のe-Tax(電子申告システム)がシステムダウンして夕方から電子申告ができない状態でした。慌てて税務署に最後の5件を持ち込みましたが、紙で提出すると65万円控除は使用できず、55万円控除になるとの説明です。国税庁のシステムがダウンしたための手持ちと説明してもダメでした。改めて、今日の早朝にやっと電子申告できました。

青色申告控除には10万円、55万円と65万円があります。55万円控除受けるためには、①不動産所得または事業所得を営んでいること、②正規の簿記の原則により記帳していること、③貸借対照表及び損益計算書を添付することとなっています。ここで現金主義による記帳では55万円控除は受けることができません。

不動産所得では事業的規模であれば55万円控除または65万円控除が適用されます。事業的規模の基準としてアパートの場合は10室以上、家屋の場合は5棟以上が示されています。また、国税庁のQ&Aでは、事業的規模でない小規模な不動産の貸付と事業所得を生ずべき事業を兼業している場合には、55万円控除又は65万円控除の適用が受けられるとあります。

65万円控除は、これら55万円控除の要件にプラスして、次のいずれかに該当している必要があります。

① 仕訳帳及び総勘定元帳について電子帳簿保存をしていること

② 確定申告書の提出期限までにe-Taxを利用して申告すること

電子帳簿保存は令和4年からは事前承認が不要になりました。が、今回の令和3年分は①の要件は満たしていないので、②の要件を満たす必要があります。ところが3月14日に国税庁のシステムが反応しなくなり、期限内に電子申告できるかが怪しくなってきて、焦りました。

3月15日になって、国税庁のHPに「e-Tax の障害により期限内の申告が困難な場合には、本日中に書面により提出していただくか、個別に申告期限を延長して、後日提出していただくことができます」と告知されました。後日提出の場合は、申告書に「e-Tax の障害による申告・納付期限延長申請」を記載していればよいとなっています。

新設の「ひとり親控除」 第249回

令和2年の年末調整・確定申告から、控除関係において大幅な改正となっています。基礎控除が従来の38万円から48万円に変更となり、一方、給与所得控除は最小で65万円だったものが、55万円となります。合計して103万円は変化ありませんが、身体に染みついた数字が変わるので、頭を柔軟にしなければついていけません。

未婚のひとり親に対する税制上の措置と、寡婦(寡夫)控除の見直しがあります。従来は未婚の「ひとり親」に対しては税制上の手当はありませんでしたが、ひとり親控除が新設されています。「ひとり親」とは次の要件を満たす人です。

①生計を一にする、所得金額48万円以下の子がいる

②本人の合計所得金額が500万円以下

③婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいない

このように「ひとり親」は、婚姻歴の有無や性別にかかわりません。「ひとり親」に該当すれば、ひとり親控除として35万円控除が適用されます。特に年末調整において洩れないように注意しなければなりません。

男性の場合、従来の寡夫控除が、ひとり親控除に変わったことになります。婚姻歴が有無は関係なくなった分だけ、対象が広がりました。女性は、ひとり親控除に該当しない場合でも、次に該当すれば寡婦控除27万円が適用されます。

①夫と死別した後、婚姻をしていない人、又は夫の生死が明らかでない人

②夫と離婚した後、扶養親族がいる人

ともに本人の合計所得金額が500万円以下であることが条件です。男性は寡婦控除に相当するものはありません。ひとり親控除または寡婦控除に該当する場合、給与から源泉所得税を控除する場合の扶養人数の1名にカウントされますので、これも忘れないようにしなければなりません。

かなり近しい方でも、寡婦控除等は洩れることがあります。よくよく注意して該当の有無を検討しましょう。

コロナウィルスによる確定申告の期限延長 第229回

新型コロナウィルスの感染拡大の防止から、令和元年度の確定申告期限が、1ヶ月延長となりましたが、うちの事務所では、お陰様でなんとか3月16日までにほぼ終了しました。

従来から基本的に確定申告期限内は、税務署による新規の税務調査の着手はされないとされています。昨年と3年前は、その期間でも法人税の調査がありましたので、原則としてはでしょう。

今回は、個人の申告期限が延長されたことに伴い、個人の所得税だけでなく、相続税等の資産税の調査も4月16日までは行われません。税理士が関与している法人への調査においても原則,同日まで新規調査は行われない方針とのことです。

ただし、1ヶ月延長される前に、調査の日程が既に3月16日の週から3社続けて入っており、予定通り受けることにしました。後ろに日程がズレると、他の会社の決算等に影響してきますので。

延長後の申告期限、納付期限は、個人の申告所得税、個人事業主の消費税、贈与税ともに令和2年4月16日となります。

うちのお客様は納付書による納付ではなく、ほぼ銀行口座からの振替納税を選択して頂いています。延長された振替納税日は、申告所得税は令和2年5月15日(金)、個人事業主の消費税は令和2年5月19日(火)となります。

新型コロナウィルスについては、逆にあおっているのではと思えるほど、報道が過熱です。「アビガン」という特効薬が富山化学工業㈱(現・富士フイルム富山化学㈱)により開発され、政府は200万人分備蓄していることが、3月19日付けの日経新聞一面で報道されました。もともとは2014年3月にインフルエンザ対策として製造販売承認を取得しています。

アビガンを開発した白木教授はテレビに出演し、重症患者に効くと発言していますが、未だ厚労省は治験準備中としています。中国製薬会社の浙江海正薬業にライセンス供与しており、2月に中国当局から生産認可を得ており、量産を本格化しています。「治療の効果は明らかだ」と中国科学技術省が3月17日の記者会見で発表しています。そのため、中国ではいち早くコロナ騒動が治まりつつあります。

あまり踊らされないようにしましょう。

令和2年度税制改正 ②所得税 第228回

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

令和2年度税制改正の2回目として、今回は所得税関連の改正です。いよいよ、例年の確定申告シーズンモードに入ってきたところです。

未婚のひとり親に対する税制上の見直しがあります。従来は、未婚であれば寡婦(または寡夫)控除が適用されませんでした。改正案では未婚であっても、次の要件を満たせば所得金額から35万円が控除されます。令和2年分以後の適用です。

①生計を一にする子(所得金額48万円以下)

②本人の合計所得金額が500万円以下。

寡婦(寡夫)控除についても見直しがあります。現行では、寡夫の場合は、所得金額が500万円以下であれば、子について27万円控除がありました。寡婦の場合は、所得金額が500万円以下であれば、子について35万円控除、子以外の扶養または扶養がなくても27万円控除があります。寡婦の場合、所得金額が500万円を超えても、扶養があれば27万円控除が適用されました。

このように寡婦と寡夫では取扱いが異なります。改正案では、まず所得金額が500万円を超える場合は、寡婦、寡夫ともに控除はなくなります。所得金額が500万円以下で子の扶養があるときには、ともに35万円控除となります。

寡婦の場合で、子以外の扶養があるときには、27万円控除が認められています。さらに配偶者と死別であれば、扶養がなくても27万円控除となります。まだ少し寡婦の方が寡夫よりも優遇されているようです。

また、低未利用地の活用促進(案)として、親族間を除いて低未利用地を譲渡した場合、譲渡益から100万円を控除することができます。要件としては、500万円以下の譲渡であり、所有期間が5年を超えること等です。

今年の確定申告期間は、2月17日(月)から3月16日(月)までです。早めに申告してしまいましょう。

令和元年度 税制改正 ①所得税 第207回

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

令和元年度税制改正の第1回として、今回は所得税です。税制大綱には「消費税率の引上げに際し、需要変動の平準化等の観点から、住宅に対する税制上の支援策を講ずる」と記載されています。

消費税率10%が適用される住宅取得等について、住宅ローン控除の控除期間を10年間から13年間に3年延長されます。ただし、11年目以降の3年間については消費税率2%引き上げ分の負担に着目した控除額となります。

一般の住宅(認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅以外の住宅)の場合 次に掲げる金額のいずれか少ない金額になります。

①住宅借入金等の年末残高(4,000万円を限度)の1%

②建物購入価格(税抜)(4,000万円を限度)2/3%

3年間で消費税増税分にあたる建物購入価格の2%の範囲内で減税を行い、住宅ローン残高が少ない場合は、従来通り年末残高に応じて減税されます。

入居1~10年目は改正前と同様の税額控除となります。ローン残高の1%控除され、各年、最大で40万円の控除です。認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅の場合は、建物購入価格、住宅ローン年末残高の控除対象限度額は5,000万円になります。

平成31年4月1日以後に提出する給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の「特別控除申告書については、①住宅の取得等をした年月日、②居住の用に供した年月日、③住宅の取得等の対価の額、④住宅の取得等をした家屋の床面積の記載を要しなくなります。

替わって、これらは住宅ローンを有する場合の所得税額の「特別控除証明書」の記載事項となります。

いずれにしても、あまり大きな改正ではありません。

株式等を譲渡したときの税金 第199回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

株式等の譲渡による譲渡所得は、「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」と「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」に区分し、「申告分離課税」となります。

ここで「株式等」とは、株式、持分、投資信託の受益権、特定受益証券発行信託の受益権、社債的受益権、公社債等をいい、総称して「株式等」といいます。

「上場株式等」とは「株式等」のうち、金融商品取引所に上場されている株式等、店頭売買登録銘柄として登録されている株式等をいいます。「株式等」のうち、「上場株式等」以外のものを「一般株式等」といいます。

一般株式等に係る譲渡所得の譲渡益の計算方法は次のとおりです。
総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)=一般株式等に係る譲渡所得等の金額

これは上場株式等に係る譲渡所得の譲渡益の計算でも同様ですが、別々での計算となります。上場株式等に係る譲渡損失の金額を一般株式等に係る譲渡所得等の金額から控除すること及び、一般株式等に係る譲渡損失の金額を上場株式等に係る譲渡所得等の金額から控除することはできません。

税率は、上場株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)、一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)ともに、所得税15%、住民税5%の計20%となります。平成25年から2037年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告します。

確定申告書では「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」に記載することになります。

 

 

 

 

 

車を売却したときの税金 第198回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

確定申告、真っ最中の今日この頃です。個人の申告は法人のように会計データのみではなく、控除のハガキや株の取引報告書等の書類を寄せ集めての作業なので、抜かりがないようにしないといけません。

今年の特徴は、なぜかうちの会計事務所を税務署と間違って電話してこられる方がおられます。日に数件はかかってきます。狩生孝之さんにお願いしているリスティングの効果、または、このブログで税務上のことを記載しているからかもしれません。

手前味噌で申し訳ありませんが、調べ物をしようとしてネット検索したときに、自分のブログ記事がトップに表示されたときはビックリしました。

さて、土地や建物を売却した場合は、譲渡所得税として分離課税の申告をします。では、自家用車を売却した場合はどうなるのでしょう? 法人の場合は、固定資産売却益として法人税の対象となります。

個人の場合、家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡の場合、生活用動産の譲渡による所得として、所得税は課税されません。しかし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個又は1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は課税されることになります。

ただし、個人事業主が事業の経費として減価償却している場合は、課税の対象となります。総合課税の譲渡所得の金額は次のように計算します。

譲渡所得の金額=譲渡価額-(取得費+ 譲渡費用)-50万円

短期譲渡所得(5年以内の譲渡)の金額は全額が総合課税の対象になりますが、長期譲渡所得の金額はその2分の1が総合課税の対象になります。

車の売却で多額の利益がでることがありますので、気をつけましょう。

収用等により土地建物を売った時の特例 第194回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

土地収用法やその他の法律で収用権が認められている公共事業のために、土地建物を売った場合には、収用などの課税の特例が受けられます。この特例は次の2つがあります。

①対価補償金等で土地建物に買い換えたときは譲渡がなかったものとする特例と、②譲渡所得から最高50百万円までの特別控除を差し引く特例の2つでいずれかを選択することになります。

①の場合、売った金額より買い換えた金額の方が多いときは所得税の課税が将来に繰り延べられます。売った年については譲渡所得がなかったものとされます。一方、売却した金額より買い換えた金額の方が少ないときは、その差額を収入金額として譲渡所得の金額の計算を行います。

①の特例を利用する際に留意すべきことは、代替で取得した資産を売却した土地建物を10年後、20年後に売却したときに、そのことを失念しないことです。代替資産を取得したときの取得価額が譲渡原価とはなりません。

代替資産を売却した時には、収用された土地建物の当初の取得価額を把握していなければなりません。それが代替資産を売却したときの譲渡原価となります。

例えば、10百万円で取得した土地が100百円で収用されたとします。この時に②の50百万円控除を使用すれば、100-10-50=40百万円の譲渡所得に対して課税されます。

①を使えば収用時には譲渡所得はなかったものとされますので課税は繰り延べられます。代替取得した土地を売却した時に、譲渡原価は10百万円として譲渡所得を申告します。土地の値上がり程度により、多額の譲渡所得税となることもあります。50百万円控除が使えないだけに尚更です。

代替資産の取得は単なる課税の繰延べだけでなく、50百万円控除が使用できずに、将来に多額の課税となる可能性がありますので、あまりお勧めできません。

 

青色申告特別控除の改正 第160回

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

平成30年2月28日の衆院本会議では,平成30年度予算案とともに,平成30年度税制改正を行う法律案が賛成多数により可決され,参院へ送付され、3月31日までの年度内に成立する見通しとなっています。

改正のうち、平成32年1月1日から、青色申告控除の65万円が55万円に減額されるというものがあります。

現状では、青色申告者は、10万円または65万円の青色申告特別控除額を控除することができます。

65万円控除の場合、不動産所得→事業所得の順に控除します。65万円の特別控除は、取引の内容を正規の簿記の原則に従って記帳し、その帳簿記録に基いて作成された貸借対照表を添付する場合に適用されます。

税務調査の経験上、たとえ正規の簿記の原則に従って記帳していても、貸借対照表の添付を失念すると65万円控除を適用させてもらえません。

10万円控除の場合は、不動産所得→事業所得→山林所得の順に控除します。

平成32年度から青色申告控除65万円が55万円減額となりますが、次の要件のいずれかを満たせば、控除額は65 万円のままとなります。

① 仕訳帳及び総勘定元帳について、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律に定めるところにより電磁的記録の備付け及び保存を行っていること。

② 所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、 その提出期限までにe-Taxを使用して行うこと。

e-Taxを使用すれば65万円のままということです。e-Taxは会計事務所にとっては、かなり便利です。お客様の印鑑を頂く手間(ご説明はもちろんしますが)、物理的に提出する手間がなくなりました。期限内であれば、何回も提出できるところも助かります。