法人税

節税保険対策通達 第219回

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

定期保険及び医療保険に係る保険料の取扱いが改正されました。令和元年6月28日付けで、長期平準定期保険等の取扱いを定める個別通達が廃止されました。新たに法人税基本通達9-3-5の2(定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い)等を新設しています。令和元年7月8日以後の契約から適用です。

全額損金可能な節税保険への対策の新通達となっています。ただし、「保険期間が3年未満の定期保険等」や「最高解約返戻率70%以下、かつ年換算保険料相当額が30万円以下の定期保険等」の保険料については、期間の経過に応じて損金算入することになります。

新設の通達9-3-5の2では、最高解約返戻率50%超の定期保険等の保険料の取扱いを次のように定めています。

まず、最高解約返戻率が50%超70%以下の場合、資産計上期間は保険期間の前半4割相当の期間となり、資産計上額は支払保険料の40%です。残額を損金算入することになります。

次に、最高解約返戻率が70%超85%以下の場合、資産計上期間は保険期間の前半4割相当の期間であり、資産計上額は支払保険料の60%となります。残額を損金算入します。

最後に、最高解約返戻率が85%超の場合、資産計上期間は、保険期間開始日から最高解約返戻率となる期間の終了日までとなり、資産計上額は支払保険料×最高解約返戻率×70%(保険期間開始日から10年経過日までの期間は90%)となります。

改正前は、解約返戻金がピークの時に解約することで、保険支払による経費を先に計上し、解約返戻金による収益を後に計上することが可能でした。それにより、一時的に節税になっていました。

そもそも、損金に算入しても、解約返戻金として戻ってきますので、単なる課税の繰延(税金支払いの先延ばし)です。従来より、保険を利用した節税はあまりお勧めしていません。

 

使途秘匿金と使途不明金 第188回 

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使途秘匿金とは、租税特別措置法第62条第1項に「法人がした金銭の支出のうち、相当の理由がなく、その相手方の氏名又は名称及び住所又は所在地並びにその事由を当該法人の帳簿書類に記載していないものをいう」とされています。

金銭の支出には、贈与、供与その他これらに類する目的のためにする金銭以外の資産の引渡しを含みます。貸付金、仮払金であっても、名義人を通じて記載された以外の者に支出されている場合は、相手方の氏名等を帳簿書類に記載していないとみなされ、使途秘匿金となる場合があります。

ただし、資産の譲受けその他の取引の対価の支払としてされたものであることが明らかなもの、すなわち取引の対価として相当であると認められるものについては使途秘匿金から除かれます。

同第3項には「税務署長は、法人がした金銭の支出のうちにその相手方の氏名等を当該法人の帳簿書類に記載していないものがある場合においても、その記載をしていないことが相手方の氏名等を秘匿するためでないと認めるときは、その金銭の支出を第1項に規定する使途秘匿金の支出に含めないことができる」と、税務署長の認定があれば使途秘匿金に該当しないとしています。

税務上、まず使途秘匿金は経費に認められず、加算・社外流出となり、通常の法人税等の計算に含められます。

更に、特別税額が設けられており、同第一項には「当該使途秘匿金の支出の額に100分の40の割合を乗じて計算した金額」が加算されます。地方税では7%加算されます。この特別税額は別枠で追加課税されるため、赤字法人で課税され、支払わなければなりません。

例えば、100万円の使途秘匿金があった場合、損金として認められないため、地方税も含めた実効税率34%の34万円と、40%の特別税額40万円、約7%の地方税7万円で、計81万円の税金となります。使途秘匿金の約8割近い税金を支払うことになります。

一方、使途不明金は、支出先と支出額は明らかでも、使い道がわからないものです。使途秘匿金は使った先も使い道もわかりません。使途不明金も同様に損金には認められませんが、40%の特別税額、約7%の地方税は課税されません。

 

 

 

欠損金の繰越期間が10年に 第187回 

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欠損金の繰越期間については、以前は5年でしたが、平成13年4月1日以後に開始の事業年度からは7年に延長になっています。

更に平成20年4月1日以後に終了する事業年度からは9年に延長されていました。

その後、平成28年度税制改正により、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年とされています。これに伴い、法人税の別表七の事業年度の欄は10年分の10行です。

ただし、中小企業等(資本金1億円以下の法人)以外の上場会社や、上場会社の子会社等の場合、控除出来る金額は所得金額の100%ではありません。

平成29年4月1日~平成30年3月31日開始事業年度では、所得金額に対して100分の55を乗じた金額が控除限度額となります。

平成30年4月1日以降、開始事業年度からは所得金額に100分の50を乗じた金額が控除限度額となります。

ただし、更生手続開始の決定があった法人等や新設法人の場合は全額控除できます。新設法人の場合は普通法人に限り、100%子会社や株式移転完全親法人の場合は全額控除とはなりません。

また、平成27年度税制改正において、帳簿書類保存要件における保存期間を、10年に延長する改正が行われており、平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額から適用することとなっています。

帳簿書類等の保存期間については、原則、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりませんが、欠損金の生ずる事業年度においては、帳簿書類の保存期間が10年になっています。

残余財産の確定と清算結了 第186回 

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会社を清算する場合、資産をすべて換価し、債務の整理が終了すると、残余財産が確定します。残余財産を分配することによって清算事務は終了します。これを清算の結了といいます。

会社は清算結了の登記によって消滅するのではなく、実質的な清算の結了によって消滅します。すなわち、債権の取り立て、債務の弁済、残余財産の分配という清算事務が終了していなかったりすると、清算結了の登記がされても、会社の法人格は消滅しません。

平成22年10月1日以後の解散については、直近の清算中の事業年度末日の翌日から残余財産確定の日までを対象期間として、継続企業と同様の確定申告書を提出します。貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・勘定科目内訳書等を添付します。

残余財産確定の日は、従来、個々の事案ごとに適宜判断するものとされていました。実務上は、すべての財産の換価が終了し、一部の確定した未払金を残して他の弁済すべき債務の弁済が終了した日を残余財産確定の日として問題ないとされます(「解散・清算の実務完全解説」太田逹也著)。

申告書を提出する際には、どうしても未払法人税等は残ってしまいます。税務署に確認すると、清算の申告書で、貸借対照表上に、現金預金や未払金などが残っていても問題ないとの回答です。

その後、残余財産の分配を行い、残余財産確定後の税金等の支払が終了することにより、貸借対照表の全ての科目の残高がゼロとなります。残高がすべてゼロとならないと、清算の登記はできません。そのため、残余財産の確定の日と、清算結了の日は概念が異なるとされます(前著参考)。

つい混同しがちですが、残余財産確定の日と清算結了の日を分けて考える必要があります。

 

 

 

個人と法人間の低額譲渡 第184回 

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低額譲渡とは、時価よりも低い価額で売買することです。今回は個人間、法人間ではなく、個人対法人の場合の税務関係を整理してみます。

まず、個人から法人に低額譲渡した場合です。譲り受けた法人は時価で資産を計上するため、受贈益が計上されます。この受贈益に対して法人税が課税されることになります。

例えば、時価9千万円の土地を4千万円で買い取った場合、会計上の仕訳は次のようになります。

土地 9千万円 /現預金 4千万円

/受贈益 5千万円

低額で譲り渡した個人の方は、時価の2分の1以上での譲渡であれば所得税は課税されませんが、時価の2分の1に満たない金額(この例では4千5百万円)で譲渡すると時価9千万円で譲渡したとみなされ、譲渡所得税が課税されます(みなし譲渡所得税)。

所得税法第59条には「著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)」での取引は時価で資産の譲渡があったものとみなされます。著しい価額とは「資産の譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額とする」(所得税施行令第169条)とされています。

次に、法人から個人へ低額譲渡した場合です。譲渡した側の法人は、時価で取引をしたとみなされ、売却益に法人税が課税されます。

例えば、簿価3千万円の土地(時価9千万円)を4千万円で売却した場合、次のような仕訳になります。

現預金 4千万円 /土地  3千万円

寄附金 5千万円 /売却益 6千万円

ただし、利害関係が全くない第三者との取引であれば、土地の固定資産税評価額がいくら高くてもその価格で売却出来ない場合、合意した金額が時価ということになります。であれば、売却益は1千万円となります。

低額譲渡された個人の側では、時価との差額、ここでは時価9千万円と譲渡価額4千万円の差異について、従業員、役員であれば給与所得に、従業員でも役員でもなければ一時所得となり、所得税が課税されまることになります。

中小企業等経営強化法 第148回 

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平成29年4月1日から平成31年3月31日までの期間、中小企業等経営強化法に基づく支援措置が設けられています。

主務大臣(担当省庁)から経営力向上計画の認定を受けた中小事業者等は、計画実行のための支援措置を受けることができます。支援措置には、税制措置と金融措置があります。

税制措置とは、認定計画に基づき取得した一定の設備について、地方税や法人税等の特例措置を受けることができるというものです。

地方税については、固定資産税が3年間半分となります。

法人税については、即時償却または取得価額の10%の税額控除が選択適用できます(中小企業経営強化税制)。ただし、資本金3,000万円超1億円以下の法人の場合は、税額控除は7%となります。

「一定の設備」とは、次の2つの要件を満たすものとなっています。

① 一定期間内に販売されたモデル(中古資産は対象外)

② 経営力の向上し資するものの指標が旧モデルと比較して年平均1%以上向上している設備

要件①、②については、工業会等から証明書を取得する必要があります。

設備の種類と価額の要件は、機械装置160万円以上、ソフトウェア70万円以上、器具備品・工具30万円以上、建物附属設備60万円以上です。

即時償却と税額控除を選択適用することとなっていますが、税額控除の方がお勧めです。即時償却は、瞬間的に税金は安くなりますが、償却期間トータルでは減価償却費は変わらず、税額は同じです。対して、税額控除は税金が減額されます。

また、従来からの30%特別償却または税額控除7%の中小企業投資促進税制も残っています。こちらは特に届出、認可は必要ありません。

 

第143回 資本金による税務上の相違

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会社を設立する場合、または増資をする場合、資本金をいくらにしたら、税務上、有利なのでしょう。 資本金1000万円、3000万円、1億円等の基準が考えられます。

資本金1000万円以下の場合は、設立後2年間消費税が免税されます。ただし1期目の期首から6ヶ月間の課税売上高が1,000万円を超えた場合、2期目から課税事業者となります。

また、地方税の均等割が71,000円(福岡市本社の場合で県税21,000円、市税50,000円)となります。従業員50人超であれば141,000円(市税120,000円)となります。

資本金3000万円以下の場合は、均等割は208,500円(県税52,500円、市税156,000円で、資本金1億円まで同額)となります。従業員50人超であれば232,500円(市税180,000円)となります。

また、中小企業等投資促進税制において特別償却と税額控除のいずれかが認められます。資本金3000万円を超えると税額控除が認められません。

税額面から見れば、特別償却は単に早めに償却するだけで、耐用年数期間で考えれば減価償却費は変わらず、結果として税額は変わりません。即時償却(100%償却)の場合も同様です。

一方、税額控除は、税金が控除されます。税額控除限度額は、基準取得価額の7%相当額です。法人税額の20%が控除限度額となりますが、控除しきれなかった金額は1年間の繰越しが認められます。

資本金1億円超となると、次のような中小企業等の優遇措置が受けられなくなります。

  • 800万円以下の所得に対する軽減法人税率15%
  • 繰越欠損金の控除割合100%
  • 欠損金の繰戻しによる還付制度
  • 交際費等の全額損金算入(800万円以下)
  • 少額減価償却資産(30万円未満)の一括経費処理

などであり、前述の中小企業等投資促進税制も適用できません。中小企業の場合は、資本金は1億円以下が税制上、有利となります。

 

税額控除を考慮すれば、3000万円までの資本金が税務上、有利となります。

第78回 権利金の認定課税

IMG_3741 元気ですか! 福岡の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

国税庁のHPでは「法人が借地権の設定により他人に土地を使用させる場合、通常、権利金を収受する慣行があるにもかかわらず権利金を収受しないときには、原則として、権利金の認定課税が行われます」とあります。

土地の借地権の取引事例は、ここ福岡ではあまり聞いたことがありません。であれば、権利金を収受する慣行がないともいえます。が、国税庁の「財産評価基準書」に借地権割合が載っていることは、取引慣行があるという税務署の見解です。

確かにそう言われてみれば、相続税に際しての土地の評価では、この借地権割合を差し引いて計算しています。しかし、通常の権利金を収受しない場合に、一律に権利金の認定課税が行われる訳ではありません。

相当の地代を収受している場合には、権利金の認定課税が行われません。ただし、税務上の相当の地代とは、自用地評価の6%です。不動産鑑定士に尋ねると、地代というのは市場金利だそうです。例えば、2%で土地を取得して2%の地代で貸すということです。

ところが、現在はマイナス金利の時代です。法を制定した当時は6%が市場金利だったかも知れませんが、実態とかけ離れています。この状況では、税法でいう相当な地代というのはあり得ないということになってしまいます。

となると、権利金の認定課税が避けるためには、税務署に「無償返還届出書」を提出する必要があります。ただし、この「無償返還届出書」を提出すると、相続時の土地評価は自用地評価×80%となります。借地権割合が50%とすれば、30%評価が高くなってしまいます。結果、相続税が高くなります。

ややこしい話ですが、権利金の認定課税として入口で課税されるか、相続時の出口で課税されるかの違いだそうです。