保険・年金

意外と知らない経営セーフティ共済(倒産防止共済)のデメリット 第258回

中小機構の経営セーフティ共済は、一般的には「倒産防止共済」と言われています。

そもそも経営セーフティ共済の趣旨は、取引先の倒産という事態に備えるために、不足の事態に直面した際に、必要資金を速やかに借入できる共済制度です。

共済金の借入が受けられるのは、法的整理、取引停止処分、災害による不渡り等、公に得意先が倒産した場合です。いわゆる夜逃げ等の場合には適用できません。

共済金からの借入は無担保・無保証人で貸倒債権の範囲内で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで可能です。制度の趣旨から売掛金の回収が困難になったときは速やかに借り入れることができます。無利子ということになっていますが、借入金の10%が共済の積立から控除されます。

このように得意先の倒産に備えての共済ですが、掛金が損金算入できるということで、納税を一旦回避するために使用されていることが多いようです。税制上の優遇措置が受けられるとHPにも案内されています。

月額掛金は5,000円~20万円まで自由に選べて、増額・減額ができます。前納もできます。1年以内の前納掛金は払い込んだ期の損金として計上できます。ただ、前納すれば1月につき1,000分の0.9だけ減額されます。個人事業主の場合は、不動産所得等の事業所得以外の収入には損金算入が認められていません。

解約はいつでもできますが、納付月数が12ヶ月未満の場合、解約手当金は受け取れません。なので、1年以内に解約することはあまり考えられません。40ヶ月以上掛けていれば100%戻ってきますが、1年超2年以内の解約であれば80%の解約金となります。40ヶ月までは掛け月数に応じて逓増していきます。

5年後に共済金が戻ってきたときには、雑収入で受け入れます。利益に計上しますので、ここで課税されます。期間を通してみれば、節税ではなくて、単なる課税の繰延です。その間、資金を自由に使えず、共済金が全額戻ってこない場合が種々想定されます。取引先の倒産防止という本来的な意味合いでの使用をお勧めします。

※動画でも解説しています。

保険は課税の繰延 第236回

令和元年7月から新たな節税保険対策通達が適用されています。支払全額が損金可能な節税保険に対する対策の通達です。法人税基本通達9-3-5の2では、最高解約返戻率により、資産計上する支払保険料の率が定められています(ブログ第219回参照)。このように、保険による節税に対応する形で、税制改正が行われてきました。

また、倒産防止共済を使用している場合、年間最大240万円保険料として計上することはできます。倒産防止共済に加入したことにより、連鎖倒産を免れたお客様もおられますので、本来の意味で使用することは必要な場合もあります。

倒産防止共済のHPにおいて、デメリットの2つ目に解約手当金は課税となることが挙げられています。保険支払で、その期の損益を下げても、戻ってきたときに課税されますので、節税ではなく、単なる課税の繰延ということです。

保険は長い目でみれば節税にはなりませんので、うちの事務所ではお客様には保険は勧めていません。保険会社からのススメにより入る分については保険本来の目的もありますので、関与しないことにしています。

例えば、200万円づつ保険料を支払い費用計上します。4年間支払った5年後に800万円が戻ってきたとすると、1~4年目は課税所得がそれぞれ200万円減り、実効税率を34%とすると各年度の税金が、68万円づつ減ります。

ただし5年目に800万円戻ってくれば、272万円の税金を一気に支払わなくてはなりません。5年目に役員退職金等の大きな経費があればいいですが、そうそうはありません。大きな支出は通常は固定資産に計上されます。

中小企業の場合、課税所得800万円までは実効税率が23.5%(福岡県・福岡市の場合)と通常より10%ほど低くなり、400万円までは21.7%と更に低くなります。多額の戻り金があると、この低い税率が使用できず、かえって税金が高くなることも考えられます。

決算対策でのお買い物も必要なものであれば、単なる課税の繰延です。それほど必要でもないけれども、節税のために無駄な買い物をすれば、お金が減るだけです。100万円の経費分を支出すれば、34万円の税金は減りますが、その分お金が減ります。100万円に対する税金を支払えば、66万円のお金が残ることになります。

『生命保険はヒドい。騙しだ』 第206回

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

10年前に、事務所講演会で講演をして頂いた副島隆彦先生の著書です。副島先生は博多出身です。にもかかわらず講演会の初っ端に「君たちは田舎者だ!」と罵倒していました。次の瞬間、「いかんいかん、お客様の悪口を言っては」と言われたのには笑いました。2回目の講演会では、本田健さんとのジョイントの講演会で盛り上げてもらいました。

その副島先生の衝撃的なタイトルの本です。先生自身の体験をもって書かれた本です。毎月56千円の保険料を25年間払って1,400万円支払っているのに、何も戻ってこないことに驚いています。

保険の内容が、終身保険険100万円、定期保険4,900万円でした。定期保険は満期になると1円も返ってきません。副島先生の場合、80才の定期保険で、ご自身は80才を超えて生きるつもりなので、掛け捨てだったことに怒っています。

自分は政治・経済の最高の知識人であると自認していたのに、そんなことも知らず奥さんに任せきりにしていた。終身部分をもっと増やすべきだったことに後悔しています。

そこからの行動がスゴイです。東京駅前の日本生命丸の内ビルに2018年7月と8月に乗り込んでいます。これからも納得いくまで話し合うそうです。

今、問題にしているのは、保険の見直しについてです。65才の副島先生はもうすぐ掛金が16万円の3倍に跳ね上がるそうです。保険の更新、見直し、切り替えにカラクリがあるとして、裁判まで持って行く勢いです。

かつて私の友人の会計士が保険会社のデューデリジェンス(純資産調査)をしたときに、しみじみと「山崎さん、実態を知れば知るほど、バカらしくなりますよ」と言っていたことが思い出されます。

 

第7回「生命保険で節税はできません」

元気ですか~ 福岡の公認会計士、税理士の山崎隆弘です。

そういえば、このブログのタイトルは「なぜ、できる社長は保険で節税しないのか」でしたね。
スッカリ忘れていました。

ということで、今週は、保険のことを書いてみたいと思います。
皆さんは、依頼している会計事務所から生命保険を勧められたことはあるでしょう。
うちの事務所の場合は、先代からの伝統もあり、保険は全く取り扱っていません。

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