率の経営 第246回

キャッシュを残す経営

週刊ダイヤモンド元編集長の岩佐豊さんに、9年ほど前に事務所の会議室でセミナーをして頂きました。その時に伺ったお話が、今でもとても心に残っています。それは「率の経営」です。

決算を締めて、当期純利益の確認をする際に、特に中小企業の経営者の場合は、まず利益の金額に目が行きます。そして、それに応ずる税金が頭に浮かぶようです。会社によっては数百万円も利益が出れば、大騒ぎとなります。

金額だけに注目していると、そうなりがちです。経営を見る場合に、売上に対する利益率は最も大事な指標の一つです。営業利益率(営業利益÷売上高)や経常利益率(経常利益÷売上高)などです。

以前、このブログでは経常利益率7%を目指しましょうと書きました。コロナの状況でも、少なくとも5%は欲しいところです。例えば1億円の売上の場合、5%の経常利益率であれば、経常利益5百万円となります。5百万円の利益でしたら、1百万円程度の法人税・地方税です。

利益をみる場合に、率で考えることが大切です。トヨタ自動車の営業利益が2兆円というと、とてつもないことのようですが、利益率は8%(令和2年3月期)です。このように、売上が増えれば、それだけ利益も増えなければいけません。

ただ、中小のオーナー企業の場合、役員報酬の設定如何により、利益率が大きく変わってきます。しかし、最近の税法の傾向は、所得税、相続税などの個人の税金は厳しく、法人税はゆるくとなっています。法人の実効税率は35%前後となっており、中小企業の場合は、8百万円以下であれば20%強です。

個人の所得税は、最大の所得税率は45%であり、地方税10%を足すと55%となります。税金的には法人で利益を計上した方が、お金を残し易くなっています。素直に法人で利益を計上した方が、個人の所得で抜くよりもお金が溜まる税金の仕組みとなっています。役員報酬を抑えて、営業利益率は10%を確保すると、財務体質的にも強くなります。

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