2021年 11月 の投稿一覧

書評『嫌われた監督』 第270回

今年の日本シリーズはヤクルトVSオリックスで、ソフトバンクホークスはクライマックスシリーズさえも出場できず、ひいきのチームが出ていないとこれだけ興味がわかないものかと思えるくらい、全くの無関心でした。

替わりにと言っては何ですが、中日ドラゴンズの落合博満監督時代のことを書いた『嫌われた監督』を読んでいました。ジュンク堂でベストセラー1位となっています。落合監督は8年間でリーグ優勝4回、日本一1回の成績を残しています。

『嫌われた監督』は監督就任から退任までの8年間をそれぞれ一人の選手・フロントを取りあげて、落合監督との係わりで書かれています。著者は当時、中日番の記者だった鈴木忠平さんです。

あまりに面白くて一気読みしてしまいました。現役時代は3度の三冠王と圧倒的な成績を残した落合監督ですが、孤高のイメージが強いです。監督になってからも、周りに理解されずに年々に孤立していき、監督最後のシーズンは何とペナントレースが終わらないうちに、球団社長から契約を更新しない旨の発表がありました。

その時点で、首位ヤクルト4.5ゲーム差がありました。直前の巨人との対戦で負け、ほぼ優勝の行方が決まりつつある状況でした。真偽のほどはハッキリしませんが、巨人戦を観戦していた当時の中日球団社長がガッツポーズをしたという噂が広がり、選手一同燃え上がり逆転のリーグ優勝してしまいます。日本シリーズではソフトバンクに3勝4敗で負けますが、これは余興のようです。

著者の鈴木記者は落合監督の自宅に押しかけたり、新幹線に同席して取材していました。最終章に「落合というフィルターを通して見ると、世界は劇的にその色を変えていった。この世にはあらかじめ決められた正義も悪もなかった。列に並んだ先には何もなく、自らの喪失を賭けた戦いは一人一人の眼前にあった。孤独になること、そのために戦い続けること、それが生きることであるように思えた」と書いています。回りに流されず、自分を貫いた落合監督に十分、共感しました。

今年度の年末調整の改正点 第269回

税理士向けの研修DVDで「今年の年末調整の改正点」が販売され、何か改正があったかな?と思い、洩れがあってはいけないので見てみました。

昨年度は基礎控除などもろもろの改正があり、結構、大変でした。今年度の改正では、改正前は、源泉徴収に関する申告書の電子提出をする場合には、事前に税務署長の承認を受けなければならないとなっていました。改正後は税務署長の承認手続を廃止するとなっています。うちの事務所が請け負っている場合は、当たり前のように電子申告していましたので、ほぼ何も変わりません。

次に、押印義務の見直しがあります。改正前では税務関係書類には、一定の者が押印しなけらばなりませんでしたが、改正後は一定の書類を除き、押印を要しないとなっています。

これは新型コロナウイルス感染症の拡大防止のためにテレワークの推進のためとなっています。そもそも電子申告の場合には印鑑が不要となっています。このような業務効率化になる改正は歓迎です。以前は、申告書に修正がある度に、お客さんのところに改めて印鑑を頂きに行っていましたので、結構、大変でした。

ここで「一定の書類を除き」が気になります。令和3年4月1日以降は、次にものを除いて押印を要しないとなっています。

①担保提供関係書類および物納手続関係書類のうち、実印の押印及び印鑑証明書の添付を求めている書類

②財産分割協議書に関する書類

これだけですので、年末調整申告書について、従業員等の押印は不要となっています。

また、不動産契約書においても電子契約が導入されるようです。法改正が実施され、2022年5月頃から契約業務のデジタル化が本格的になってくる予想されています。そうなると、電子文章に電子署名等を用いて、契約締結できることになります。コスト削減、業務効率化のメリットがいわれていますが、手形と同様に印紙税がなくなるのではないかと考えられます。

電子帳簿保存法の改正(続) 第268回

前回、令和3年度の税制改正により電子帳簿保存法が改正について書きましたが、電子取引データの保存は令和4年1月1日から施行されますので、問合せが多くなっています。

そこで、前回に引き続き、電子帳簿保存法の改正についてです。電子取引データ保存については、令和4年1月1日から適用されます。電子取引の保存要件は二つあります。一つは、本当にその電子データが正しいものかを保証する仕組みの真実性の要件です。二つには該当する取引情報を調べることができる仕組みの可視性の要件です。

真実性の要件として

  • 取引相手がタイムスタンプを付与した取引情報を送信すること
  • 自社が取引情報を受け取った後にタイムスタンプを付与すること
  • 訂正削除の履歴を確認できるか、制定削除できないシステムを利用すること
  • 訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用すること

となっています。タイムスタンプとは、電子文書の確定時刻を証明するための技術的な仕組みのことを言います。これら4つのうち、1つ以上に対応していればよいとされており、4番目の事務処理規程は国税庁のHPに様式がアップされています。当面は、この規程を作成しておけばOKのようです。

可視性の要件として

  • パソコン等で操作マニュアルを備え付け、取引情報を表示、印刷出来るようにしておくこと
  • システムの概要書を備え付けること(自社開発システムの場合)
  • 検索機能を確保すること

の3つすべてに対応していなければなりません。検索機能については「取引年月日・取引先名・取引金額」で検索可能であれば要件を満たしとしていますので、この3つを入れたファイル名で保存します。パソコンのフォルダ内にあればファイル名で検索が可能です。

要は、税務調査の際にすぐに取り出せることが求められているようです。調査の現場では、会計データをそのまま要求されるようになってきました。電子帳簿保存法の改正は、コロナ禍で滞っていた税務調査のための環境整備ではないかとも考えられます。