2021年 5月 の投稿一覧

『月刊ヤマサキズム』2021年6月号 Vol.150

こんにちは。

公認会計士・税理士 山崎隆弘事務所の山崎二三代でございます。

令和3年6月号のニュースレター「ヤマサキズム」ができあがりました。

 

新緑の季節を迎えたと思ったら、福岡では5月中に梅雨入りしました。予想外の展開で、朝晩ちょっと寒いので、いつまでも長袖を着ています。ですが、紫陽花があちらこちらで色づき始め、足を止めて眺めています。カレンダーを読めないのに、植物や動物はちゃんとその時期になったら姿を現しますね。すごいなーと感心しています。

 

さて、今月号は産休に入ったユウに代わり、入所3年目でこのニュースレターを作成しているゆかちゃんの新コーナーが始まります。今回は自己紹介。果たしてどんなゆかちゃんなのか、読んでからのお楽しみです。その他、梅雨入り前の満開のバラや鹿や猫の写真もあります。

みなさまのご意見、ご感想をお待ちいたしております。

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意外と知らない経営セーフティ共済(倒産防止共済)のデメリット 第258回

中小機構の経営セーフティ共済は、一般的には「倒産防止共済」と言われています。

そもそも経営セーフティ共済の趣旨は、取引先の倒産という事態に備えるために、不足の事態に直面した際に、必要資金を速やかに借入できる共済制度です。

共済金の借入が受けられるのは、法的整理、取引停止処分、災害による不渡り等、公に得意先が倒産した場合です。いわゆる夜逃げ等の場合には適用できません。

共済金からの借入は無担保・無保証人で貸倒債権の範囲内で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで可能です。制度の趣旨から売掛金の回収が困難になったときは速やかに借り入れることができます。無利子ということになっていますが、借入金の10%が共済の積立から控除されます。

このように得意先の倒産に備えての共済ですが、掛金が損金算入できるということで、納税を一旦回避するために使用されていることが多いようです。税制上の優遇措置が受けられるとHPにも案内されています。

月額掛金は5,000円~20万円まで自由に選べて、増額・減額ができます。前納もできます。1年以内の前納掛金は払い込んだ期の損金として計上できます。ただ、前納すれば1月につき1,000分の0.9だけ減額されます。個人事業主の場合は、不動産所得等の事業所得以外の収入には損金算入が認められていません。

解約はいつでもできますが、納付月数が12ヶ月未満の場合、解約手当金は受け取れません。なので、1年以内に解約することはあまり考えられません。40ヶ月以上掛けていれば100%戻ってきますが、1年超2年以内の解約であれば80%の解約金となります。40ヶ月までは掛け月数に応じて逓増していきます。

5年後に共済金が戻ってきたときには、雑収入で受け入れます。利益に計上しますので、ここで課税されます。期間を通してみれば、節税ではなくて、単なる課税の繰延です。その間、資金を自由に使えず、共済金が全額戻ってこない場合が種々想定されます。取引先の倒産防止という本来的な意味合いでの使用をお勧めします。

※動画でも解説しています。

書評『人新生の「資本論」』 第257回

『新書大賞2021』の大賞受賞作です。というよりも、何よりも内容が素晴らしいです。著者はまだ33才の斎藤幸平さんです。随分とラインマーカーを引きながら読みました。まず「人新生(ひとしんせい)」という用語は初めて目にしました。

地質による時代の区分は大きなものから「代」と呼ばれ、それが「紀」に分かれ、さらに「世」に分かれます。人類の活動は、地球の歴史の中で11,700年程前の「新生代・第四紀・完新生」に始まって、現代まで続いています。ところが産業革命以後の約200年間における森林破壊、気候変動などにより「人新生」という、人類が地球を破壊しつくす次の時代に入っていると言われます。それを「人新生」の時代といいます。

環境破壊といえば、国連が掲げ、各国政府も大企業もでSDG’s(持続可能な開発目標)を推進しています。しかし「SDG’sの行動指針をいくつなぞったところで、気候変動は止められない。SDG’sはアリバイ作りのようなものであり、目下の危機から目を背けさせる効果しかない」とまで言い切ります。

人類の経済活動が全地球を覆ってしまった「人新生」とは、収奪と転嫁を行うための外部が消尽した時代です。環境危機がこれほど深刻化しても、ひたすら経済成長を追い求め、地球を破壊していることに警鐘を鳴らします。

これまでの経済成長を支えてきた大量生産・大量消費そのものを抜本的に見直さなければ地球が破壊されます。世界の富裕層トップ10%が二酸化炭素の半分を排出しているデータもあります。

これに対して、脱成長こそが、ほとんど唯一、資本主義を長期的に安定的に持続する方法であると、社会経済学者の佐伯啓思は述べています。持続可能性と平等こそ、資本主義の危機を乗り越えるために取り戻すべきものであり、その物理的条件が定常型経済とします。

それがマルクスが最晩年に目指した平等で持続可能な脱成長型経済であるとしています。一読をお勧めします。