2018年 12月 の投稿一覧

管理会計の重要性がわかる『会計の世界史』 第195回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

公認会計士の田中靖浩さんが書かれた『会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ500年の物語』(日本経済新聞出版社)を読んでみました。

田中会計士はほぼ私と同世代ですが、監査法人での勤務はないようです。「笑いが起こる会計講座」の講師として活躍中とプロフィールにあります。著者自身によると、講義で歴史を用いると、好奇心をもって会計を理解する経験ができるそうです。

第1部では簿記の発祥から会社組織ができるまでを、イタリアとオランダを舞台にレオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』と簿記をからめて、レンブラントの『夜警』と会社をからめて説明しています。『夜警』は昨年、ア ムステルダム国立美術館で観ました。大きな絵です。

第2部では財務会計について、、イギリスとアメリカを舞台に蒸気機関車、蒸気船、自動車の発明をからめて説明します。設備投資が大きくなることによって、利益を把握するために「減価償却」が登場します。これは会計の歴史にとって画期的な出来事です。絵画界における写真の登場くらいインパクトがあったそうです。

第3部は管理会計について、ジャズ(ルイ・アームストロング)、プレスリー、ビートルズをからめて説明していきます。

財務会計は過去の数字を扱った「守りの会計」とすると、管理会計は未来の予測を含んだ「攻めの会計」とします。外部報告用の財務会計とはちがって、管理会計は「内部利用目的」の会計のため、どのようにセグメント(区分)するか、共通費をどのようない配賦計算するか、自由度が高くなります。

マッキンゼー教授がシカゴ大学で「管理会計」を開講した1919年が管理会計の発祥とすると、来年は管理会計100年を迎えることになります。また、セグメントも連結も鉄道会社から出てきたことを始めて知りました。確かに「連結」はいかにも鉄道用語です。

会計は管理会計を経て、現在は企業価値の計算するものとなってきています。大変、興味深く読むことができました。

 

収用等により土地建物を売った時の特例 第194回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

土地収用法やその他の法律で収用権が認められている公共事業のために、土地建物を売った場合には、収用などの課税の特例が受けられます。この特例は次の2つがあります。

①対価補償金等で土地建物に買い換えたときは譲渡がなかったものとする特例と、②譲渡所得から最高50百万円までの特別控除を差し引く特例の2つでいずれかを選択することになります。

①の場合、売った金額より買い換えた金額の方が多いときは所得税の課税が将来に繰り延べられます。売った年については譲渡所得がなかったものとされます。一方、売却した金額より買い換えた金額の方が少ないときは、その差額を収入金額として譲渡所得の金額の計算を行います。

①の特例を利用する際に留意すべきことは、代替で取得した資産を売却した土地建物を10年後、20年後に売却したときに、そのことを失念しないことです。代替資産を取得したときの取得価額が譲渡原価とはなりません。

代替資産を売却した時には、収用された土地建物の当初の取得価額を把握していなければなりません。それが代替資産を売却したときの譲渡原価となります。

例えば、10百万円で取得した土地が100百円で収用されたとします。この時に②の50百万円控除を使用すれば、100-10-50=40百万円の譲渡所得に対して課税されます。

①を使えば収用時には譲渡所得はなかったものとされますので課税は繰り延べられます。代替取得した土地を売却した時に、譲渡原価は10百万円として譲渡所得を申告します。土地の値上がり程度により、多額の譲渡所得税となることもあります。50百万円控除が使えないだけに尚更です。

代替資産の取得は単なる課税の繰延べだけでなく、50百万円控除が使用できずに、将来に多額の課税となる可能性がありますので、あまりお勧めできません。