2018年 9月 の投稿一覧

使途秘匿金と使途不明金 第188回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

使途秘匿金とは、租税特別措置法第62条第1項に「法人がした金銭の支出のうち、相当の理由がなく、その相手方の氏名又は名称及び住所又は所在地並びにその事由を当該法人の帳簿書類に記載していないものをいう」とされています。

金銭の支出には、贈与、供与その他これらに類する目的のためにする金銭以外の資産の引渡しを含みます。貸付金、仮払金であっても、名義人を通じて記載された以外の者に支出されている場合は、相手方の氏名等を帳簿書類に記載していないとみなされ、使途秘匿金となる場合があります。

ただし、資産の譲受けその他の取引の対価の支払としてされたものであることが明らかなもの、すなわち取引の対価として相当であると認められるものについては使途秘匿金から除かれます。

同第3項には「税務署長は、法人がした金銭の支出のうちにその相手方の氏名等を当該法人の帳簿書類に記載していないものがある場合においても、その記載をしていないことが相手方の氏名等を秘匿するためでないと認めるときは、その金銭の支出を第1項に規定する使途秘匿金の支出に含めないことができる」と、税務署長の認定があれば使途秘匿金に該当しないとしています。

税務上、まず使途秘匿金は経費に認められず、加算・社外流出となり、通常の法人税等の計算に含められます。

更に、特別税額が設けられており、同第一項には「当該使途秘匿金の支出の額に100分の40の割合を乗じて計算した金額」が加算されます。地方税では7%加算されます。この特別税額は別枠で追加課税されるため、赤字法人で課税され、支払わなければなりません。

例えば、100万円の使途秘匿金があった場合、損金として認められないため、地方税も含めた実効税率34%の34万円と、40%の特別税額40万円、約7%の地方税7万円で、計81万円の税金となります。使途秘匿金の約8割近い税金を支払うことになります。

一方、使途不明金は、支出先と支出額は明らかでも、使い道がわからないものです。使途秘匿金は使った先も使い道もわかりません。使途不明金も同様に損金には認められませんが、40%の特別税額、約7%の地方税は課税されません。

 

 

 

欠損金の繰越期間が10年に 第187回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

欠損金の繰越期間については、以前は5年でしたが、平成13年4月1日以後に開始の事業年度からは7年に延長になっています。

更に平成20年4月1日以後に終了する事業年度からは9年に延長されていました。

その後、平成28年度税制改正により、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年とされています。これに伴い、法人税の別表七の事業年度の欄は10年分の10行です。

ただし、中小企業等(資本金1億円以下の法人)以外の上場会社や、上場会社の子会社等の場合、控除出来る金額は所得金額の100%ではありません。

平成29年4月1日~平成30年3月31日開始事業年度では、所得金額に対して100分の55を乗じた金額が控除限度額となります。

平成30年4月1日以降、開始事業年度からは所得金額に100分の50を乗じた金額が控除限度額となります。

ただし、更生手続開始の決定があった法人等や新設法人の場合は全額控除できます。新設法人の場合は普通法人に限り、100%子会社や株式移転完全親法人の場合は全額控除とはなりません。

また、平成27年度税制改正において、帳簿書類保存要件における保存期間を、10年に延長する改正が行われており、平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額から適用することとなっています。

帳簿書類等の保存期間については、原則、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりませんが、欠損金の生ずる事業年度においては、帳簿書類の保存期間が10年になっています。

残余財産の確定と清算結了 第186回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘で

会社を清算する場合、資産をすべて換価し、債務の整理が終了すると、残余財産が確定します。残余財産を分配することによって清算事務は終了します。これを清算の結了といいます。

会社は清算結了の登記によって消滅するのではなく、実質的な清算の結了によって消滅します。すなわち、債権の取り立て、債務の弁済、残余財産の分配という清算事務が終了していなかったりすると、清算結了の登記がされても、会社の法人格は消滅しません。

平成22年10月1日以後の解散については、直近の清算中の事業年度末日の翌日から残余財産確定の日までを対象期間として、継続企業と同様の確定申告書を提出します。貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・勘定科目内訳書等を添付します。

残余財産確定の日は、従来、個々の事案ごとに適宜判断するものとされていました。実務上は、すべての財産の換価が終了し、一部の確定した未払金を残して他の弁済すべき債務の弁済が終了した日を残余財産確定の日として問題ないとされます(「解散・清算の実務完全解説」太田逹也著)。

申告書を提出する際には、どうしても未払法人税等は残ってしまいます。税務署に確認すると、清算の申告書で、貸借対照表上に、現金預金や未払金などが残っていても問題ないとの回答です。

その後、残余財産の分配を行い、残余財産確定後の税金等の支払が終了することにより、貸借対照表の全ての科目の残高がゼロとなります。残高がすべてゼロとならないと、清算の登記はできません。そのため、残余財産の確定の日と、清算結了の日は概念が異なるとされます(前著参考)。

つい混同しがちですが、残余財産確定の日と清算結了の日を分けて考える必要があります。

 

 

 

「枝野幸男、魂の3時間大演説」 第185回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

緊急出版!と本屋さんにでていましたので、手に取って思わず買って、読んでみました。

2018年7月20日、第196回国会の最終日、枝野さんによる内閣不信任案趣旨弁明演説を書籍化したものです。

「今の日本の議会制民主主義がどうなっているのか」「本来、議会制民主主義とはどうあるべきなのか」についてその正確さ、その鋭さ、そして格調の高さから近年の憲政史に残る名演説と、刊行理由に記されています。

不信任決議案を提出した7つの理由として、1つに「高度プロフェッショナル制度の強行」。これは定額働かせ放題の制度であるとしています。

2つに「カジノ法案の強行」。カジノ事業者がカネを貸せる貸金業法の事実上の例外まで盛り込んでいることに警鐘を鳴らします。

3つに「アベノミクスの失敗」。一部の中堅層の給与所得者を狙い撃ちする控除の見直しも批判しています。

4つに「政治と社会のモラルを低下させるモリカケ問題」。あくまでも適材適所と開き直っていますが、総理のために停職処分も恐れず公文書を改ざんして国会を騙す人が総理にとっての適材適所なのかと糺します。

そして「ごまかしだらけの答弁。民主主義を無視した強行採決」。聞かれたことに正面から答えないだけにとどまらず、聞かれてもいないことをダラダラとしゃべり続ける安倍総理の姿勢を問題視しています。

そもそも民主主義とは単純な多数決とイコールではなく、例えば、2階以上の住民が結束すれば、エレベーターの費用負担を1階の住民だけに押しつけるという決をとることが可能になる例を出し、民主主義とは少数派の意見を尊重し、理不尽、不合理でない意見を決めるべきとします。

更にあと3つの不信任決議案の理由を述べます。実際に読んでみて、ご自身で判断する必要があります。