2018年 6月 の投稿一覧

「その節税が会社を殺す」 第175回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

新刊の「その節税が会社を殺す お金に強い社長がコッソリやってる節税&資金繰りの裏ルール31」(松波竜太著)を読みました。この本は、無駄な節税が会社のキャッシュを苦しくし、倒産に追い込むおそれがあると警告しています。

無駄な節税の具体的な手法は、保険に入る、役員報酬を増やす、経費を使う等です。私がほとんど勧めない方法で、同感です。この本では、それよりも手元資金を増やすために、節税ではなく銀行借入を推奨します。

後半は銀行借入するための手法が詳しく書かれており、こちらの方が参考になりました。会社が倒産するのは手元資金がなくなるからであり、そのためには銀行からの借入を利用してキャッシュを月商3ヶ月分を持つべきだとします。

銀行は「救済機関」ではないとして、銀行借入への次の5つのカン違いを挙げます。

①取引する銀行は1行に絞ることで、イザというとき味方になってくれる→1行に絞ることで、銀行から切られたらゲームオーバー。

②決算書の借入残高が少ない方が融資を受けやすい→銀行は、お金を借りている相手に貸したい。

③中小企業は保証協会を付けないと借りられない→保証協会抜きの融資は十分可能。うちのお客様でも、つい最近プロパー融資に切り替えてもらいました。

④借入を半分にすれば支払い金利は半分になる→借入を半分にすれば金利は上がる。

⑤借入がなくてもある程度、預金残高があれば信用してくれる→銀行は融資している相手だけが客。

そして、無借金経営ではなく、実質無借金(預金>借入金)を目指すべきとします。日本政策金融公庫には預金制度がなく、ここからの借入金を使うことにより、ある銀行に対して実質無借金状態にすることによって、銀行への交渉力が強くなる方法として勧めています。

 

子会社の整理損 第174回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

100%出資の子会社を整理する場合の損失についてです。平成22年のグループ税制改正により従来とは大きく変わっています。

まず出資分の子会社株式の損失については、会計上は「子会社整理損」として計上しますが、税務上は損金として認められません。

グループ税制改正前は実務上、子会社整理損は損金となるという意識で処理をしていました。改正後は、たとえ会社が清算されても整理損は損金にはなりません。

100%子会社株式の整理損の損金算入が認められない替わりに、100%子会社の繰越欠損金を親会社が引き継ぐことになっています。

グループ法人税制では、100%グループ内部の取引には課税を生じさせないという考え方が採られています。その整理の中で、100%グループ内の寄附金についても、グループ全体としては課税関係を生じさせないこととしています。

改正以前は、子会社の税務上の繰越欠損金が債務免除よりも大きいことを確認して、債務免除益を検討していました。改正後は子会社に対する債権について、貸倒の要件を満たさない債権放棄であるときは、親会社における寄付金になります。

一方、子会社における受贈益は益金不算入となります。そして、100%子会社を解散・清算する場合、残余財産が確定すれば子会社の欠損金を親会社に引き継ぐことになります。

債権債務の面において、子会社で受贈益がいったん認識されますが、完全支配関係がある法人間の寄付金ということで、親会社の寄付金の全額が損金不算入となり、子会社の受贈益の全額が益金不算入になります。

連結子会社の清算時の申告 第173回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

事務所では連結納税対応の法人様が3グループあります。連結納税は10年以上前から申告していますが、当初は適当なソフトもなく、エクセルの表計算で申告書様式を作っていましたので、大変でした。

毎年、連結納税の別表が何十枚も変わるため、とても手では対応できずに、現在は「連結納税の達人」(NTTデータ)を使用しています。連結ソフトを使用すれば、新制度に対応していますので安心です。

6月決算会社の連結申告は、まだ国税庁のシステムが税制改正に対応しておらず、紙で提出しなければなりません。8月決算会社では、その年度の申告書対応となっているので、電子申告によることができます。

子会社が清算した場合の申告については、通常の会社の清算とは少し異なります。通常は、解散の決算・申告して、2~3ヶ月間の公告の後に、清算結了の決算・申告をします。

連結子会社の場合は、解散があった場合でも、それによって連結納税の承認は取り消されることなく、決算日が到来すれば、個別益損益金額を含めて連結確定申告を行います。

残余財産の確定があった場合には、確定日の翌日に連結納税の承認は取り消されたものとみなされます。期首から残余財産確定日までがみなし事業年度となり、清算子会社が連結法人として単体申告を行うこととなります。

ただし、他に連結子法人がない場合、親会社もみなし事業年度の申告しなければなりませんので、留意が必要です。決算日に清算結了の連結申告をすれば、その翌日から連結の届出が取り消され、親会社が年2回決算することは避けられます。