2017年 4月 の投稿一覧

第119回 均等割基準の改正

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

平成27年度税制改正前は、法人住民税均等割の税率区分の基準となる「資本金等の額」は、法人税申告書の別表51)の「資本金等の額の計算に関する明細書」の合計額をそのまま基準としていました。

均等割とは利益がなくても納税しなければならない法人市民税・県民税です。福岡県福岡市では資本金等1千万円以下で71,000円です。資本金等が1千万円を超えると均等割は208,500円となります。

平成27年度地方税法の改正により、法人住民税均等割の税率区分の基準となる額は、「資本金等の額」に、次の1の額を加算し2および3の額を減算した金額となっています。

  1. 平成2241日以後に、無償増資により利益剰余金または利益準備金を資本金の額に組み入れた金額
  2. 平成1341日~平成18430日に、旧商法の規定に基づいて無償減資による欠損てん補をした金額
  3. 平成1851日以後に、会社法の規定に基づいて資本金の額または資本準備金の額の減少により生じたその他資本剰余金を欠損てん補に充てた金額

結果として、外形標準課税の資本割の課税標準と同じ規定となっています。

同じ平成27年度税制改正により、法人住民税均等割の基準である資本金等の額が、資本金と資本準備金の合計額を下回る場合、基準を資本金と資本準備金の合計額とすると改正されました。

自己株式を取得した場合、法人税法上の資本金等の額は減算しますが、会社法上の資本金の額と資本準備金の額は変わりません。この場合は、「資本金の額+資本準備金の額」が税率区分の基準となる額となります。

最近は、自己株式を取得するケースが増えています。均等割の金額に注意しましょう。

第118回 東芝 継続企業の前提に対する疑義

元気ですか! 公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

「光る光る東芝、回る回る東芝」のかつてのCMソングが耳に残る東芝のダッチロール飛行が止まりません。平成29年411日、2度の発表延期のすえに20161012月期決算を、PwCあらた監査法人の「意見不表明」のまま発表しました。

監査報告書の「監査人の責任」には、「当監査法人は、結論の表明の基礎となる証拠を入手することができなかった」と記載しています。「結論の不表明の根拠」には、米国ウエスチングハウスエレクトリックカンパニー社(WH)による、不適切なプレッシャーの存在を示唆する情報がもたらされた、とされています。

平成2812月の「第3四半期報告書」には継続企業の前提に関する注記が記されています。その要因として1つに、1年以内返済予定借入金残高2,835億円が財務制限条項に抵触しており、一括返済のおそれがあること。2つにWHの米国原子力発電所建設プロジェクトに関しての保証債務があること、3つに特定建設業の許可の更新ができない可能性があることとしています。

同報告書では、平成28年12月末現在で債務超過2,256億円となっています。平成263月期には1271億円あった純資産と比較すると、12,527億円減少したことになります。

日本公認会計士協会は、監査の手続きが適正だったか調査に乗り出し、東芝の担当会計士らから事情を聞く方針と報道されています。

粉飾決算が明らかになった平成27年11月に、CAPA(太平洋会計士連盟)ソウル大会で、当時の日本公認会計士協会会長が「東芝だけの問題ではなく、ガバナンスの問題」とコメントをしていましたが、経営陣も、監査人も責任を問われる厳しい状況になりつつあります。

第117回 投資事業組合について

元気ですか! 福岡の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

投資事業組合には、投資事業有限責任組合に関する法律による投資事業有限責任組合、有限責任事業組合に関する法律による日本版LLP(Limited Liability Partnership)等があります。投資家から資金を集め、配当することが目的です。例えば投資信託は投資信託及び投資法人に関する法律によるものです。

投資組合の実体は契約書だけとなります。投資事業有限責任組合、有限責任事業組合は、契約書を法務局に持ち込んで登記するので、投資事業有限責任組合はお金を集めている人の名前と住所が公開され、有限責任事業組合はそれに加え投資家の名前と住所も公開されます。そういう意味では有限責任事業組合は使い難くなっています。

そのため、お金を集めるのは個人ではなく、合同会社、株式会社を設立して行います。株式会社はゴーイングコンサーンといって、継続企業が前提です。それに対して、投資組合は最初から投資期間を決めて、解散することを前提にしたものです。

投資組合自体には税金はかかりませんが、投資組合の利益の利益に対して、投資家に課税されます。利益の全てを配当せずに、一部を再投資をする投資組合であっても、投資組合の全ての利益に課税されます。投資家が個人の場合は所得税、法人の場合は法人税が課せられます。

投資事業有限責任組合等の場合、投資組合の決算書に対して公認会計士の監査が必要になり、監査報酬が発生します。最近は東芝の監査でもめているように、公認会計士、監査法人もかなり厳格になっています。これらのことを勘案すると、中小企業が自社で投資事業有限責任組合等を作って投資をすることは、あまり意味がないようです。