2016年 8月 の投稿一覧

第86回 「プライベートバンカー」

プライベートバンカー元気ですか! 公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

お盆休みに清武英利著の「プライベートバンカー カネ守りと新富裕層」を読みました。清武氏といえば、巨人の球団代表(GM)を2004年~2011年まで務めていましたが、球団を告発し、巨人軍の職をを解任されています。このことは読後に気がつきました。もともと読売新聞記者でしたので、取材・文章力はあったのでしょう。2014年頃から特攻隊、ソニー、山一証券などのドキュメントを出版しています。

被相続人と相続人がともに五年を超えて日本の非居住者であるときは、日本国内の財産にしか課税されないという、通称「五年ルール」を満たすために、多額の資金をシンガポールに移し、五年間を過ごす日本人が実例を交えながら描かれています。

人生「あがり」となってしまって、相続税を免れるためだけに海外で過ごす日本人です。元パチンコ業者は30億円の資産を有し、日本人のプライベートバンカーからお世話を受けます。金持ちになって南の島でのんびり何も考えずに暮らしてみたいと憧れる人は多くても、実際になってみると空虚さは半端ないようです。

仕事もなく、友人もなく、海外で暮らす新富裕層の辛さに、家族が耐えられくなります。息子の嫁が最初に脱落して日本に帰ってしまう例が多いそうです。日常、お金のために忙しくしていますが、改めて「なぜ生きる」を考えさせられます。

平成27年度税制改正により、「国外転出時課税制度(出国税)」が創設され、201571日以後に国外転出をして、1億円以上の対象資産を所有等している場合には、その対象資産の含み益に所得税及び復興特別所得税が課税されます。

また、自動的情報交換制度が2017年から導入され、個人と非上場会社が海外に持つ金融口座の内容が、海外の税務当局を通じ、国税庁に情報が流れることになっています。

第85回 一般社団法人と公益社団法人

IMG_0107元気ですか! 福岡の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

平成18年の公益法人制度改革により、従来の民法による社団法人に替わって、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」により一般社団法人が、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」のより公益社団法人が設けられました。

公益社団法人は設立時に行政庁に公益認定を申請する必要があるのに対し、一般社団法人は設立登記のみで許認可は不要です。公益社団法人は毎年度、行政庁に報告義務があって、3年ごとに行政庁による検査を受けます。

行政庁とは、複数の都道府県に事務所を設置する場合は内閣総理大臣、一つの都道府県のみであれば知事となります。一般社団法人は、行政庁に対する報告義務等はありません。

公益社団法人は、原則、会計監査人を設置しなければなりません。ただし、費用負担を伴うため、一定の基準に達しない場合は設置を義務付けられていません。一定の基準とは収益1,000億円未満、費用1,000億円未満、負債50億円未満の全てを満たす場合ですので、そうそう基準を満たす法人は考えられません。

公益社団法人は公益目的事業から生じた所得は課税対象にはなりませんが、収益事業に対しては法人税が課税されます。一般社団法人のうち、非営利法人の要件に該当する場合は、同様に収益事業にのみ法人税が課税されます。公益事業には課税されません。

非営利法人の要件とは、剰余金の分配を行わないこと、解散したときは残余財産を国・地方公共団体等に贈与することを定款に定めていること等です。

非営利法人に該当しない場合は、法人が行う全ての事業が課税対象となります。株式会社、合同会社と同じです。非営利法人の要件である配当不可、残余財産は国等に贈与は、中小企業の経営者にとってはハードルが高いですね。