2016年 6月 の投稿一覧

第79回 高額特定資産を取得した場合の消費税

IMG_3932 元気ですか! 福岡の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

消費税率の10%への改正は、2年半再延長されることになりましたが、平成28年度改正のうち「高額特定資産を取得した場合の中小事業者に対する特例措置の適用関係の見直し 」については、そのままの適用となります。

これは中小企業が消費税の免税を受けていない及び簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に「高額特定資産」の仕入れ等を行った場合には、この高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の翌課税期間から、当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度及び簡易課税制度は適用されないというものです。

ここで、「高額特定資産」とは、一の取引の単位につき、課税仕入れに係る支払対価の額(税抜き)が 1,000 万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産をいいます。例えば、3月決算会社の場合、平成293月期に1,000万円以上の太陽光発電システムを取得したとすると、平成303月期、313月期は、消費税は原則課税となります。

また、自己建設高額特定資産については、この高額特定資産の建設等に要した仕入等の支払対価の額の累計額が 1,000万円以上となった日の属する課税期間の翌期から、建設等が完了した日の属する期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間まで、事業者免税点制度及び簡易課税制度を適用しないこととなっています。

平成293月期に高額特定資産の建設等に要した仕入等が1,000万円以上となり、平成313月期に完成した場合、平成333月期まで、消費税原則課税の課税事業者となります。

高額資産を取得した場合の消費税還付に対応するための改正です。その後2年間は、売上が1,000 万円以下になっても、消費税課税事業者(原則課税)になるということです。

第78回 権利金の認定課税

IMG_3741 元気ですか! 福岡の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

国税庁のHPでは「法人が借地権の設定により他人に土地を使用させる場合、通常、権利金を収受する慣行があるにもかかわらず権利金を収受しないときには、原則として、権利金の認定課税が行われます」とあります。

土地の借地権の取引事例は、ここ福岡ではあまり聞いたことがありません。であれば、権利金を収受する慣行がないともいえます。が、国税庁の「財産評価基準書」に借地権割合が載っていることは、取引慣行があるという税務署の見解です。

確かにそう言われてみれば、相続税に際しての土地の評価では、この借地権割合を差し引いて計算しています。しかし、通常の権利金を収受しない場合に、一律に権利金の認定課税が行われる訳ではありません。

相当の地代を収受している場合には、権利金の認定課税が行われません。ただし、税務上の相当の地代とは、自用地評価の6%です。不動産鑑定士に尋ねると、地代というのは市場金利だそうです。例えば、2%で土地を取得して2%の地代で貸すということです。

ところが、現在はマイナス金利の時代です。法を制定した当時は6%が市場金利だったかも知れませんが、実態とかけ離れています。この状況では、税法でいう相当な地代というのはあり得ないということになってしまいます。

となると、権利金の認定課税が避けるためには、税務署に「無償返還届出書」を提出する必要があります。ただし、この「無償返還届出書」を提出すると、相続時の土地評価は自用地評価×80%となります。借地権割合が50%とすれば、30%評価が高くなってしまいます。結果、相続税が高くなります。

ややこしい話ですが、権利金の認定課税として入口で課税されるか、相続時の出口で課税されるかの違いだそうです。

第77回「元国税調査官が暴くパナマ文書の正体」

IMG_3759元気ですか! 福岡の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

元国税調査官の大村大次郎氏の「パナマ文書の正体」を読みました。タックスヘイブンの問題点をわかりやすく解説しています。

タックスヘイブンに住居地を置けば、個人の税金はほとんどかかりません。多国籍企業が本拠地をここに置いておけば、法人税が節税もできます。アップル社の逃税スキームを代表例として詳しく説明しています。その結果、アップル社はグループ全体の税負担率を9.8%まで下げています。具体的には2,400億円の税金を免れたとしています。

しかし、合法だからこそ問題であるとして、「事実上、不自然に税を逃れているのに、非合法ではない」ということが、タックスヘイブンで成り立っています。

富裕層の資産がタックスヘイブンに持って行かれるために、大企業、富裕層の税金を下げざるを得なくなり、その結果、「タックスヘイブンを利用できない」中間層以下に対して増税を行うようになりました。

日本の消費税はその典型です。消費税が増税されて以来、大企業の税金はこの20年間で約3割、高額所得者の税金は約4割下がったと指摘しています。その穴埋めととして消費税が導入されており、更に10%への増税が予定されています。東日本大震災を契機とした復興特別税なども、法人税で廃止されましたが、所得税は平成49年まで続きます。

パナマ文書はタックスヘイブン全体から言えば、氷山の一角であり、日本人や日本企業は「ケイマン諸島」を使うことが多く、国際決済銀行は2015年の時点でケイマン諸島に日本のカネが約63兆円投じられていると発表しています。

世界最古の財閥は三井家で、それ以前の世界中の財閥たちは、時代の中で民衆の恨みを買い、雲散霧消しています。富裕層は自分たちの子孫を守るためにも、相応の税金をきちんと払うべきであると結んでいます。

第76回「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」

IMG_3714元気ですか! 福岡の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

タイトルはマイケル・ムーアの新作映画です。ブッシュ大統領を批判した「華氏911」(カンヌ映画祭パルム・ドール賞)、米国の医療問題を扱った「シッコ」、「キャピタリズム~マネーは踊るから」などのドキュメンタリー映画で有名です。

今回は、ベトナム・アフガン・イラクなどの侵略戦争の結果、全く良くならない米国。米国防総省からの要請で、ムーア自らが「侵略者」となって、世界各国のいいもの(制度など)を持って帰ってくるという設定です。

イタリアでの労働環境、フランスの給食制度、フィンランドの教育制度、スロベニアの大学教育、ドイツの労働者、ポルトガルの麻薬合法化、ノルウェーの刑務所、アイスランドの男女平等、そして北アフリカのチェニジアでの「アラブの春」を取材していきます。

日本に住んでいるので、日本ほどいいところはないと思っています。ところが、これらの映像を見てビックリ!です。日本がいかに世知辛く住みにくいかが知らされます。

例えば、イタリアでは1年間の有給休暇は8週間! 会社の昼休みは2時間。ドイツでは1週間の労働時間は36時間で、14時には帰宅。それもベンツ、フォルクスワーゲンなどでの取材です。ストレス過多の処方箋が出されたら、無料で温泉に3週間滞在できます。

スロベニアの大学は学費無料! 若者に借金を負わせない方針です。奨学金を返済しないといけない日本の大学生とえらい違いです。

驚いたのが、ポルトガルでは麻薬を合法化しています。ここ15年間、麻薬の逮捕者はゼロで麻薬の使用率が減っています。法律は人間の尊厳を守るためのものであるとします。

ノルウェーの刑務所では、牢屋ではなく一軒家に普通に住んでいます。鍵も自分が持っています。ところが世界で最も再犯率が低いという結果が出ています。看守は100人の受刑者に対し4名しかおらず、銃も携帯していません。

いろいろと考えさせられました。世界は広く、世界各国に学ぶことはたくさんありますね。