馬渕睦夫『日本を蝕む 新・共産主義』 第277回

書評

元駐ウクライナ大使の馬渕睦夫さんの新刊です。ウクライナ情勢を見聞する過程で、馬渕さんの存在を知りました。1946年京都府生まれで、京都大学法学部3年在学中に外部公務員上級試験に合格し、1968年に外務省に入省しています。2011年3月に65才で定年退職し、2012年から精力的に著作、講演活動を行っておられます。現在76才です。

「新共産主義」といってもピンときません。副題は「ポリティカル・コレクトネスの欺瞞を見破る精神再武装」です。本の帯には「ポリティカル・コレクトネスと共産主義、このふたつは同じコインの表裏。新自由主義というのも実は共産主義の裏返し」とあります。

ウィキペディアによれば、ポリティカル・コレクトネスとは「社会の特定のグループのメンバーに 不快感や不利益を与えないように意図された言語、政策、対策を表す言葉である」とあります。マイノリティの権利を守るということで、一見、とてもよさそうですが、馬淵さんによるとディープステート(隠れた支配層 DS )の支配戦略となります。マイノリティを使って、他国を支配するのはDSの常套手段だそうです。

共産主義はソ連が崩壊して、世界から消えたような印象があります。共産主義はマルクスが考え出したものとなっていますが、そもそもマルクスの研究を支援したのがユダヤ系大富豪ロスチャイルド(DS)でした。ソ連崩壊の教訓は「今を否定して未来の理想社会を語る言説をうかつに信用してはならない」と馬淵さんは強調し、2022年の今、再認識する必要があるとします。「社会主義・マルクス主義」は「共産主義思想の左傾化したリベラル勢力」となっています。新自由主義、グローバリズムこそが新共産主義から出たものであり、SDGsもその一環であるとしています。この新共産主義とポリティカル・コレクトネスは裏表一体であり、日本そして世界を分断させるためのDSの戦略であると警鐘します。

ウクライナ情勢については10年前から詳しくレポートしています。メディア報道とは一線を画すというより、真逆のことをウクライナに在住して大使としての経験を踏まえての解説ですので、とても説得力があります。

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