第292回 書評『THE HEART OF BUSINESS(ハート・オブ・ビジネス)』

書評

著者はユベール・ジョリー、フランス人です。2012年、倒産寸前に追い込まれていた米国の家電量販店ベストバイのCEO(最高経営責任者)に就任し、会長を含む8年の在任期間に同社を再生し、「最も働きがいのある会社」のとして業界トップ企業に成長させています。

題名の「ハート・オブ・ビジネス」とは、ビジネスの核心です。「人との深いつながり」こそがビジネスの核心とします。経済学者のミルトン・フリードマンによる「ビジネスのパーパスはお金を稼ぐこと」とは真逆です。経済アナリストの藤原直哉さんは学生時代に東大教授がフリードマンの経済を批判していたそうですが、令和となってまさにその通りになってきたと言います。

企業には決定的に重要な3つの要素があるとして、それは人、ビジネス、お金だとし、これらは相互につながっている。1つめの要素「人」が優れ、従業員の育成や充実度が高水準だと、2つめの要素「ビジネス」において、顧客が忠実に繰り返し製品やサービスを購入してくれるという結果につながり、3つめの「財務」、お金を稼ぐことになる。人→ビジネス→財務の因果関係になります。著者は、従業員こそハート・オブ・ビジネスと見なし、中心に据えています。それによってベストバイを再生させています。

人間味のある関係をハート・オブ・ビジネスに位置付けるということは、全ての人を大切に扱うということです。ビジネスはゼロサムゲームではなく、善をなすことと成功すること、どちらも可能であるとします。逆に、金銭的インセンティブは時代遅れ、的外れであり、業績給などは挑戦を、学びと成長の機会と捉えず、ミスや欠点を隠そうとするため、有害であるとまで言います。

著者は63才で、現在はハーバード・ビジネス・スクール上級講師として活躍しています。新たな時代の到来を感じさせる本です。

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