書評『岸惠子自伝』 第264回

書評

日経新聞に岸惠子さんの「私の履歴書」が昨年、2020年5月に連載されていました。とても興味深く読んでいました。「履歴書」は経済人よりも芸術系の人が興味深いです。今年の5月は吉行和子さんでしたが、実兄の吉行淳之介さんも登場し、お母さんは朝ドラのモデルになったような人で、こちらも面白かったです。経済人の場合は、どうしても自慢話を聞かされているようで、読む気が失せてきます。

その「履歴書」の焼き直しではなく、ご自身で書かれた自伝です。日経での連載が評判が良く、各出版社からオファーがあったなかで、岩波書店から『岸惠子自伝―卵を割らなければ、オムレツは食べられない』として出版です。岸さんは女優として有名ですが、作家、国際ジャーナリストとしても活躍しています。過去の著作は全て10万部以上売れているそうです。さすがに文章がこなれてます。

1932年生まれの今年89才です。太平洋戦争の終戦末期には実家がある横浜で空襲に遭い、防空壕から一人飛び出して、母親との待ち合わせ場所に辿り着き、生き残ります。防空壕にいた人は全員亡くなったそうです。

高校生のときに松竹の撮影所に出入りするようになり、バイト代並みの出演料でどんどんと抜擢されていきます。さすがの美貌で、周りの男たちが寄ってきます。『君の名は』の真知子役で一世を風靡します。相手役は佐田啓二です。流行った「真知子巻き」は撮影中にぼたん雪が吹いて寒くて大庭監督に無理を言って承知してもらったそうです。戦時中の防空頭巾でした。

人気絶頂の最中、25歳のときにフランス人のイヴ・シャピエと結婚し、パリ在住となります。登場する人たちが、力道山、王さん、長嶋さん、デビット・リーン監督、川端康成さん等々、歴史上の人物、有名人です。美智子皇后まで出てこられます。

夫の不倫により43才で離婚します。そこから更にジャーナリスト、女優、作家として活躍し、2019年には一人舞台を全国10ヶ所で公演し、現役バリバリです。68才の時には、初孫が誕生して1年余りのぼせ上がっていたというのも笑えました。

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