保険は課税の繰延 第236回

保険・年金

令和元年7月から新たな節税保険対策通達が適用されています。支払全額が損金可能な節税保険に対する対策の通達です。法人税基本通達9-3-5の2では、最高解約返戻率により、資産計上する支払保険料の率が定められています(ブログ第219回参照)。このように、保険による節税に対応する形で、税制改正が行われてきました。

また、倒産防止共済を使用している場合、年間最大240万円保険料として計上することはできます。倒産防止共済に加入したことにより、連鎖倒産を免れたお客様もおられますので、本来の意味で使用することは必要な場合もあります。

倒産防止共済のHPにおいて、デメリットの2つ目に解約手当金は課税となることが挙げられています。保険支払で、その期の損益を下げても、戻ってきたときに課税されますので、節税ではなく、単なる課税の繰延ということです。

保険は長い目でみれば節税にはなりませんので、うちの事務所ではお客様には保険は勧めていません。保険会社からのススメにより入る分については保険本来の目的もありますので、関与しないことにしています。

例えば、200万円づつ保険料を支払い費用計上します。4年間支払った5年後に800万円が戻ってきたとすると、1~4年目は課税所得がそれぞれ200万円減り、実効税率を34%とすると各年度の税金が、68万円づつ減ります。

ただし5年目に800万円戻ってくれば、272万円の税金を一気に支払わなくてはなりません。5年目に役員退職金等の大きな経費があればいいですが、そうそうはありません。大きな支出は通常は固定資産に計上されます。

中小企業の場合、課税所得800万円までは実効税率が23.5%(福岡県・福岡市の場合)と通常より10%ほど低くなり、400万円までは21.7%と更に低くなります。多額の戻り金があると、この低い税率が使用できず、かえって税金が高くなることも考えられます。

決算対策でのお買い物も必要なものであれば、単なる課税の繰延です。それほど必要でもないけれども、節税のために無駄な買い物をすれば、お金が減るだけです。100万円の経費分を支出すれば、34万円の税金は減りますが、その分お金が減ります。100万円に対する税金を支払えば、66万円のお金が残ることになります。

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