第64回「東芝不正会計 底なしの闇」

IMG_3192元気ですか!福岡の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

東京出張帰りの飛行場で「東芝不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版)を買ってみました。新書版なので、飛行機のなかで読んでしまいました。

著者は、毎日新聞の社説を執筆している今沢真氏。2016年6月からWebの経済プレミア編集長兼論説委員をしています。

経済プレミアが始まった頃(2015年6月)から、東芝の不正会計が明らかになり、そこで執筆した30本の原稿を元にしています。そのため、リアルタイムで報道した側の緊張感、臨場感、そのときの感情が伝わってきます。

経団連会長の石坂泰三さん、土光敏夫さんを輩出した名門企業「東芝」を守るためか、なんとかやり過ごそうとした姿勢が見え隠れします。社長・会長はじめ取締役の半数が辞任し、第三者委員会からの報告書が出されますが、その報告書で明かさなかった闇が三つあるとしています。

一つ目は元社長の西田厚聡氏と佐々木則夫氏の激しい対立。二つ目は子会社の米原子力大手であるウェスチングハウスの経営問題、そして三つ目は東芝の決算を監査した新日本監査法人の責任問題です。これらは第三者委員会の報告書には載っていません。

今年の2月12日に公表された2015年12月31日現在の第3四半期報告書では10月から12月の3ヶ月間で4,943億円の損失となっています。4月からの累計では5,543億円の損失です。

その結果2015年12月末の株主資本は5,274億円と半減しています。このうち繰延税金資産の減少は2,275億円ですので3,000億円近くは何らかの処理をしたことになります。

それでも子会社のウェスティングハウスが単体で計上したのれんの減損1,613億円は含まれていません。のれん簿価は3,441億円です。

監査を担当した新日本監査法人に対して、金融庁は昨年末に21億円の課徴金納付の処分を行っています。21億円というと大変な額ですが、東芝の2年分の監査報酬相当です。

新規営業3ヶ月間の禁止のみで、特に業務停止等の処分はありません。お金の処分だけで済んだという印象です。

 

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